目標管理の概要
目標管理とは、自ら目標を設定し自らPDCAを回すことで成果を最大化しつつ、本人の成長を促す手法です。
1954年に出版されたピーター・F・ドラッカーの「現代の経営」という書籍の中で、自己管理による目標管理(Management By Objectives and self-control)として紹介され、昨今は略して目標管理(MBO)という表現で知られています。
目標管理は、ドラッカーに提唱された後、アメリカでは様々な企業が目標管理を導入しました。
その後、1980年代からは多くの企業が評価制度と組み合わせて利用するようになり、日本でも同時期に多くの企業が評価制度とセットで目標管理を導入しました。
日本では、企業の約90%が目標管理を導入しているとの調査結果があり、現在も多くの企業で活用されています。
目標管理は「目標で管理する」という言葉のイメージからノルマによる管理と混同されることがありますが、その考え方は大きく異なります。
ノルマは一般的には「会社の指示によりこなす作業量/達成すべき成果」という意味合いで使われていて、強制的にやらされるものというイメージが強いです。
一方で、目標管理は、人々が自ら目標を設定して進捗を確認し達成に向けて能動的に活動すること、すなわち仕事を自らコントロール(self-control)することが重要だとされています。
先ほど紹介した書籍「現代の経営」では、目標管理の本質とは”言い換えるならば自由な人間として行動させること” とも表現されています。
では、目標管理にはどのような効果があるのでしょうか。
目標管理の効果
海外で行われた目標管理に関する研究によると目標管理に熱心に取り組む企業において生産性が56%向上したのに対し、熱心に取り組まない企業の生産性向上率は6%に留まったという調査結果があります。
出所:Impact of management by objectives on organizational productivity
この結果は、目標管理における様々な効果が要因になっていると考えられます。
目標管理には主にこれら4つの効果があると考えられます。
①やるべきことが絞り込まれ、成果を創出しやすくなる
「80:20の法則(パレートの法則)」などで知られる通り、成果の大部分は一部の仕事に起因していると言われています。
重要な仕事と、それに付随する仕事とを整理し取り組むべき目標を明確にすることで高い成果の創出が見込まれます。
②自分で取り組むことを決めることで、仕事へのモチベーションが高まる
モチベーション理論では、「内発的動機づけ」と 「外発的動機づけ」があります。
「内発的動機付け」とは、内面に沸き起こった興味・関心や意欲に動機づけられている状態で、「外発的動機づけ」は報酬や評価、懲罰などの外部からの刺激を起因として動機づけられることです。
「内発的動機づけ」があることで、その目標は持続しやすく、自身で問題解決を試みるため、結果的に自己成長にも繋がりやすくなります。
この「内発的動機づけ」を引き出すには、自分で取り組むことを決定することが大きく影響すると言われています。
自分で目標を設定し、取り組むことを決めることで、その目標の達成、つまり仕事に対してのモチベーションの向上に繋がります。
③目標に取り組んだ経験を振り返ることで、成長につながる
例えば、「月間成約件数20件」という目標を立てたとします。
実際の成約件数が14件で、目標に6件届かなかった場合、「なぜ20件に届かなかったのか」「どうすればあと6件成約できるのか」などと振り返りを行います。
そうすることで、良かった点と悪かった点を整理でき、来月に自分がとるべき行動がわかってきます。
このように、チャレンジングな目標を設定して実践・経験することで、できたこと・できなかったこと・その要因などを自分で分析することができます。
また、上司がその振り返りのサポートを行うことで、本人の成長が促進されます。
④共有することで、チームのサポート体制を強化する
目標を組織の中で共有することでそれぞれがどんなことに取り組んでいるのかを把握することができます。
よって、上司や他のメンバーがその目標達成のサポートをすることができます。
また、他の人から目標を見られることで、達成に向けた意欲も高まります。
以上目標管理の4つの効果をご紹介しました。