改善を促すフィードバックの注意点
日々フィードバックすることが当然の関係や社風になるまで、最初はさまざまな「受け入れがたい反応」が発生します。
それでは、うまくフィードバックを受け入れてもらえない場合、どう対処していくべきなのでしょうか?
フィードバックを伝えても「こういった背景があった・・・」「こういった事情で・・・」など、反論や言い訳が出てくることがあります。
その場合、まずはしっかり話を聞きます。
相手の言い分を理解したことを明確にするために、相手のコメントをオウム返しすることも効果的です。
ただし、その上で「でもね」と伝えたいことに戻り、事情はあっても改善してほしいことを改めて伝えます。
たとえば「花粉症で仕事に集中できず、期限を守れなかった」のであれば「花粉症は大変ですね。でもね、体調管理も仕事のうちだし、早いうちに通院をすることもできたと思います。期限は守ってください」など、理解を示しつつ改善してほしいところは明確に伝え、怯まないことが重要です。
反発しないまでも、本人の表情が固く黙り込んでしまうなど、フィードバックを受け入れられない場合もあります。
この場合は語調を和らげたり、成長を促したいことを改めて伝えます。
ある企業で、上司から部下へはじめてフィードバックを実施したところ、部下の表情が最初は固く困惑していたそうです。
そのため、フィードバック中に「あなたを責めているわけじゃない」と3回言って、ようやく普段の表情になったとのことでした。
結果に対するフィードバックは、結果が出たかどうかがはっきり分かるので納得感はでやすいです。
一方で積極性や協調性などの「意識や意欲」に対するフィードバックを行うときは、より注意が必要です。
たとえば「あなたは積極性が足りない。もっと自発的に動いてほしい」と指摘しても、言われた方は何をどう改善すればよいのか分かりません。
良かれと思って指摘しても、反発されるでしょう。
例として積極性を指摘する場合、「昨今のあなたは積極性が欠けているように見えます。具体的には前回の会議であなただけ発言せず、1週間前に皆に仕事を依頼したときもあなたは手を挙げませんでした」など、自分がどのような事実に対してそのように見えたのかを丁寧に伝える必要があります。
ある企業において、上司が優秀な部下に対して「あえて言うならもっとリーダーシップを発揮してくれると良い」と期待を込めて好意的に伝えたところ、「自分は何のリーダーシップが不足しているのか」と反発されて困ったという話もありました。
人によって感じ方が異なるようなポイントこそ、具体性が求められます。
改善のフィードバックは注意が必要で、サンドウィッチ形式など良い点・改善点を使い分けて話すことが重要とお伝えしました。
しかし、1-2回指摘しても改善しないときは、さらに明確に改善を促す必要があります。
より明確に改善を促すフィードバックを実施する方法として、端的に改善点を指摘する方法があります。
このケースのときも過度に感情を込める必要はなく、客観的に・淡々と伝えることが重要です。
そして、この場合はより深刻に受け止めていただくため、サンドウィッチ形式で実施する必要はありません。
本人の理解を深めるために、指摘事項をシンプルにひとつにします。
時間をとってもらったことには感謝など伝えてもOKですが単刀直入に、たとえば「今日は言いたいことが一つあります。以前も話したことがありますが期限を必ず守ってほしい」と伝えます。
何度か指摘しているので、おそらく反論はないはずですが、相手が納得できていない場合は反論もあるかと思います。
その場合は、一旦受け止めるものの、改めて「でもね」と伝えたいことに戻ります。
そして、上司から部下に改善すべき行動をはっきりと伝え、本人の同意を確認します。
このように、難易度は高いですが、ポイントを押さえながら、率直に、丁寧に、躊躇せずに改善を促すフィードバックを用いることで、大きなインパクトを持って部下の成長の手助けをすることができます。