フィードバック

フィードバックの重要性と注意点

フィードバックの重要性

それでは、そもそもなぜフィードバックが求められているのでしょうか。

フィードバックを導入する企業が増えている背景には、人材育成に対する意識の高まりがあります。

1980-90年代のグローバル企業では、ハイパフォーマーの採用とローパフォーマーの排出による人材マネジメントが主流でした。

しかし、先進国労働人口の減少や高度人材の獲得競争が激化している現代では、「今いる社員をどれだけ成長させられるか」「成長実感を与えることでどれだけリテンションできるか」に注力する企業が増えています。

そんななか、半期や一年に一度の評価面談時にのみ評価結果を伝えるのではなく、日々の仕事のなかで頻繁にフィードバックを行い、早期に成長させる手法(continuous feedback)に注目が集まっています。

旧来の年次評価ランクを廃止して継続的なフィードバックを導入したアドビや、急成長したネットフリックスが業務改善のために行ったフィードバック方法を公開したことも大きな反響を呼びました。

一方の日本では、新卒の一括採用・年功序列・長期雇用をもとに時間をかけて社員を成長させる従来のスタイルから、多様なバックグラウンドを持つ応募者を通年で採用し、人材を登用するスタイルにシフトしつつあります。

そのような環境では、さまざまな人材をより効果的かつ短期間で成長させることが求められます。

また、これまでの世代と比較して、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」では、報酬アップや昇進といった金銭的なインセンティブよりも、自己実現や自己成長といった、やりがいを求める傾向に変わりつつあります。

そのため、成長できる環境を用意できるかどうかが人材の獲得やリテンションにも大きく影響するようになりました。

日本企業においても成長支援は大きな課題で、グローバル企業と同様に、フィードバックの導入はますます広まっていくでしょう。

フィードバックを行う上での注意点

日本にははっきりと言わないことを美徳とする、遠慮する文化的傾向があり、異文化研究の分野にもその傾向は顕著に表れています。

良い点・改善点にかかわらず率直に伝えることを躊躇する上司も多く、フィードバックの仕組みを導入するハードルは依然高いままです。

さらに、ハラスメントだと思われてしまう可能性から、はっきりと伝えることにはリスクがあると感じる方もいるでしょう。

ハラスメントへの意識は年々高まっており、その種類はパワハラ・モラハラ・リモハラなど、数十を超えています。

よかれと思って指摘を繰り返したところ、突然「パワハラだ」と通報されるケースもあります。

文化的にはっきりとした指摘を好まず、一方的に指摘をしすぎるとハラスメントと言われる状況において、フィードバックを行うには適切なスキルが求められます。

昨今の人材の多様化に対応するためにも、マネジメント経験の長さに関係なく、誰もがこのスキルを学ぶ必要があります。

日本人は率直なコミュニケーションが苦手という特徴もあり、フィードバックを浸透させるには、企業の方針やルールとして徹底させることがポイントです。

ネットフリックスが日本法人にフィードバックを浸透させようとした際、当初は導入に苦戦したそうです。

そこで「いつでもフィードバックをしよう」ではなく、フィードバックを行うオフィシャルな場を定期的に設けるようにしたところ、皆十分に事前準備をして臨み、率直なフィードバックを実施できたそうです。

このように、フィードバックの方針やルールを整え、適切に実施していくことが大切です。

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