1on1の効果
1on1では、部下の気持ちに寄り添って問題解決のアドバイスや内省の支援を行います。
適切に1on1を実施することでさまざまなメリットが考えられますが、特に次のような効果が想定されます。順に説明していきます。
①一定のコミュニケーション頻度を維持することで信頼関係が生まれる
信頼関係を築く第一歩はコミュニケーションの頻度を維持することです。
心理学では「人はコミュニケーションの頻度が多ければ多いほど好意も信頼も高まる」と言われています。
これは『接触理論』と呼ばれるもので、例えば「嫌いな人でもやりとりをした後には、偏見や差別の心が減る」ことが確認されていて、接触が少ないと「何を考えているかわからない」と思われて嫌悪感を持たれることにつながります。
相手のために時間を確保していること自体が、相手への配慮を示すことにもなります。
特にリモートワークが増えて、挨拶や立ち話が減った職場においては、意図的に会話の時間を確保することが求められます。
②振り返りを促すことで成長を促進できる
効果的に成長を促すための『経験学習サイクル』という理論があります。
これは、振り返りや教訓化のプロセスを経ることで、過去の経験を成長に大きくつなげることができるというものです。
1on1では、上司が振り返りと教訓化に関する質問をすることで、部下の成長を促進させることができます。
③健康状態を確認することでメンタルや体調の状況を理解できる
特にフレックスタイムやリモートワークなどが導入されているような違う時間帯で・異なる環境で働くような企業では、部下のちょっとした変化や表情などを把握しづらくなっています。
特にメンタル不調の兆候で発生しやすいのは「勤怠の乱れ」ですが、多様な働き方の中ではこれをタイムリーに把握することが難しいです。
メンタルや体調の変化について部下が自ら申告してくれれば良いものの、こういった申告は通院後など大分悪くなった後が多く、上司から能動的に・定期的に状態を確認することで、少しの変化も早めに把握することが可能となります。
④悩みやキャリア志向を確認することで突然の退職が減少する
仕事における悩みを都度聞き出し、中長期でどのような姿を目指したいかを定期的に確認して適宜対応することで退職を防ぐことができます。
特に退職を決断する前の段階、検討中のときにどれだけ聞き出せるかが重要です。
ただし、悩みやキャリア志向の内容によっては、上司が部下をサポートできないこともあるかもしれません。
そういった場合でも、サポートが難しいことをまずはお互いが認識して、上司は早めに退職後の体制を考える、または後任を探すことが可能となります
⑤話を聴き、意見を引き出し、肯定的な反応をすることで心理的安全性が高まる
1on1の実施目的として自主性や自律性の向上が多く挙げられていますが、自主性や自律性を育む前提として、メンバーの心理的安全性を高めることが注目されています。
信頼関係と心理的安全性という言葉は似ていると思われますが、2つ言葉の大きな違いは何でしょう?
信頼関係は『個々人の間で発生するもの』で、心理的安全性は『チームで共有されるもの』です。
心理的安全性とは、アメリカの心理学者エドガー・シャインと経営学者ウォレン・ベニスによって提唱され、後にGoogleが、効果的なチームを可能とする条件を調査した際に、最も重要な因子として『心理的安全性』を紹介したことで話題になりました。
Googleの働き方をまとめたre:Workというサイトでは次のように紹介されています。
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、『無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ』と信じられるかどうかを意味しています。
心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。
自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
また、チームの心理的安全性を高めるためにはリーダーの影響が非常に大きく、リーダーがチームの心理的安全性を高めるポイントとしては「よい質問をすること」「耳を傾けること」「集中して聴く手本を見せること」「感謝を表すこと」「支援を申し出ること」などが挙げられています。
なお、Googleでも週に1回または隔週に1回、30分から60分の1on1ミーティングが推奨されています。
このように、1on1で個別に時間を取り、相手の話を聴き、よく質問して、都度ポジティブなコミュニケーションをとることが効果的なチームをつくるきっかけとなると考えられます。