1on1

1on1の実施方法

1on1の実施方法

1 on 1は肯定的・共感的なスタイルで実施することで信頼関係を構築し、部下の成長を促進することができます。

一方、課題として「上司の面談スキルの不足」「上司負荷の高まり」の二つが挙げられていました。

つまり、1 on 1は単にたくさん実施すればよいというものではなく、適切なスキルと効率的な回数の設定のもとで行うことが求められます。

それでは、具体的にどのようにして1 on 1を実施すればよいのでしょうか。

基本的なスタンス

1 on 1では、相手の話したいテーマについて傾聴・共感し、内省を促して建設的な対話を行います。

インターネット関連企業のヤフー株式会社は、1 on 1を「部下のための時間」というコンセプトで表現しています。

ねらいである信頼関係の構築と成長支援を叶えるために、1 on 1を行う上で意識すべきことは、次の3つです。

①部下のために話を聴く

1 on 1で上司が話す割合と部下の話を聴く割合のバランスについては、さまざまな調査結果がありますが、少なくとも、部下が話す割合は上司が話す割合よりも多いことが望ましく、部下の話に興味を持ち、傾聴を行うことが重要です。

この傾聴には大きく分けて、内的傾聴集中的傾聴の2種類があります。

内的傾聴とは、相手の話を聴きながらも意識は自分に向かっている状態です。

相手の話に対して「なぜこのように考えられないのか」「どうやって返答しようか」など、相手が話す内容に対し、自分の考えや解釈をイメージしながら話を聞いている状態を指します。

一方で、集中的傾聴とは、相手の言動に意識が集中している聴き方です。

相手の発する言葉の内容だけでなく、ニュアンス、表情、身振り手振り、声のトーンや仕草のどれ1つとして見逃さないように集中して聴いている状態を指します。

内的傾聴は、意識が自分に向いていることが相手にも伝わってしまうため、相手からすると、聴いているときの表情や質問内容からも、「あまり話を聴いてもらえなかった」と感じられることが多いです。

部下に「この人は自分の話に共感してくれている」と思ってもらい、目的である信頼関係構築のためにも、1 on 1では集中的傾聴を重視して実施しましょう。

また、部下の話を聴く際に意識して行うべきこととして、アクティブリスニングが挙げられます。

アクティブリスニングとは、相手が話している間、相手の目を見てうなずきや相槌を積極的に行うことです。

これによって、部下は「話を聴いてもらっている」と感じることができます。

また、話に対して肯定的に反応することで、部下の安心感を向上させることができます。

ただし、いくら部下の話したいテーマを傾聴するといっても、雑談ばかりでは成長支援につながりません。

雑談だけで終わる回があってもよいですが、毎回では効果がありませんので、部下の話したいことは尊重しつつ、信頼関係構築や成長支援につながるテーマを意識します。

②部下に教えてもらう

部下には「担当する仕事を一番理解していて遂行する能力がある」と信じて接します。

1 on 1では基本的には評価や指導、問題解決はせずに、部下自身の仕事について教えてもらうという姿勢が、部下本人の安心感や信頼感につながります。

ハーバード大学のエドモンドソン教授による心理的安全性に関する研究では、「部下は大切な貢献者、つまり重要な知識と知恵を持つ人達と考えられる」「リーダーは無知の人」と表現されています。

ただし、教えてもらうといっても、上司の知りたいことや業務の細かい点ばかり聞くと、「部下のための時間」とはならないため、それらは1 on 1とはできるだけ切り分けて実施します。

また、部下が上司に説明することで、説明した部下自身の成長が望めます。

『経験学習サイクル』という理論では、経験→振り返り→教訓化→実践を行うことで成長スピードが高まるといわれています。

1人では『振り返り』や教訓化が難しいこともあるため、これらを意識した対話を行います。

振り返りについては、部下は自己のあり方や行動を誰かに説明することで、無意識かつ暗黙のうちに行っている事柄を見える化することができます。

振り返りにより見える化されると、上司はその内容を理解することができ、アドバイスや問いかけを通じて、本人にさらに内省を促すことができます。

教訓化については「こうやったらうまくいく」という手応えを、コツやノウハウとして昇華させるのがプロセスです。

なぜ自分がこういった行動をとったのか、次にどうすればいいかなどの、成功パターンを、対話を通して探究し、自身の教訓・理論とさせることで成長を促します。

③自分も本音で話す

上司の考えや感情、プライベートなどを話し、自己開示を積極的に行うことで、部下は上司の発言の背景や上司の状況を知ることができます。

その結果、上司に対する理解が深まり、部下の安心感を高めることができます。

また、相手から何かを受け取った場合、返報性の法則という、「こちらも同じようにお返しをしないと申し訳ない」という気持ちになる心理効果が働くため、部下自身も本音を話しやすくなります。

ただし、上司が話しすぎてしまうと、1 on 1としてはよくないので、意識してタイムマネジメントを行いましょう。

1on1に適切な場所や頻度

1 on 1では本音を聞き出す必要があるため、ほかのメンバーがいない場所、たとえば個室や個別のリモート会議で実施します。

企業によっては、業務と少し切り離した会話ができるようカフェなどの外部で実施するケースもあります。

企業により頻度はさまざまですが、週もしくは月に1回のように定期的に、各回の時間は数十分程度で設定されることが多いです。

頻度が増えるほど各回の時間は短く、頻度が減るほど各回の時間は長めに設定します。

頻度と時間は、部下の業務スキルや日々の仕事での関わりなどに応じて調整します。

入社したばかりで経験の浅い方であれば、毎週1 on 1を実施することで重点的にフォローできますし、業界の環境変化が激しく、メンバーの気持ちの確認や会社の状況のアップデートが必要であれば、全員に対して頻繁に実施することも考えられます。

実施のスケジュールを定め、事前準備の時間を含めて必ず定期的に時間を確保しておくことで安定的に1 on 1を実施することができます。

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