報酬制度

報酬制度の考え方と基礎知識

報酬制度とは

まず、報酬制度とは、従業員の成果や貢献度合いに応じて支払う報酬分配の仕組みのこと。

また、報酬にも二種類あり、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」に分けられます。

「金銭的報酬」は「給与」「賞与」「退職金」「福利厚生」「年金」等のことで、「非金銭的報酬」は会社や同僚・上司からの「承認」や仕事の「裁量権・権限の付与」、「キャリア・やりがい」等を指します。

非金銭的報酬の具体例としては、表彰や留学、リモートタイムやフレックス制の導入などがあるでしょう。

また、金銭的報酬だけではなく、社内での承認や従業員の成長機会といった非金銭的報酬の配分も考慮すべきです。

従業員の動機づけや関心をいかに構築するかといった視点も忘れてはいけません。

人は数年前のボーナス額は忘れてしまっても、10年前に表彰されたことは記憶に残っているものです。

非金銭的報酬が従業員に与える影響は大きく、また制度の自由度も高いため、各社オリジナルのアイデアを柔軟に検討すると良いでしょう。

報酬制度の役割

報酬制度の役割としては、主に次の3つがあります。

社員のモチベーション向上・企業の求める行動を促す

従業員は、報酬制度を把握することで「どうすれば自分の給料が上がるか」を具体的にイメージできます。

多くの場合、報酬は従業員にとっての働く一番の理由であり、仕事の原動力となります。

そのため、報酬制度の方向性に合わせて自らの行動や成果を見直すことで、より意欲的に職務に臨めるようになるでしょう。

企業側としては、従業員にとってほしい行動や望ましいパフォーマンスに対して、より手厚く報酬を配分することで、従業員の関心と努力を適切な方向に導くことができます。

求める人材の確保と定着化

人材の価値に応じた適切な報酬制度を整備すれば、企業の求める優秀人材を確保できる他、人材の定着化、すなわち長期に渡って自社で働いてもらえるようになります。

求職の際に、応募者は各企業に対し「給与や福利厚生はどうか」「将来的なキャリアや収入が明瞭であるか」等を検証し、他の企業と比較検討を行います。

この時、同業他社の報酬水準と比較し、魅力が低かった場合、新規採用のチャンスを逃したり、すでに所属している人材の流出を招く恐れがあります。

こうした事態を防ぐため、金銭的報酬と非金銭的報酬を組み合わせた観点から企業の将来性や人材に対する姿勢を提示することが大切です。

ただし、ワークライフバランスの拡充や仕事環境の多様性の許容、福利厚生などを充実させた場合、基本待遇以外にも多くの支出が必要になる、というデメリットがあります。

一方で、従業員を大切にする会社であるというメッセージを社内外に幅広く送ることができるというメリットも拡充するので、メリット・デメリットを合わせて考慮しましょう。

人件費のコントロール

古くからの報酬制度下では、年齢や勤続年数に応じて、成果に関わらず、高額な報酬が支払われるケースがありました。

こうした年功序列型の報酬制度では人件費が不必要にかさんでしまうことがよくあります。

従業員の生み出す付加価値・生産性と、膨らむ人件費が見合っていないことが多いためです。

そこで、従業員一人一人に期待される能力や業務の実態に沿った報酬制度を構築することで、会社の利益にとって有用な人材に適切な報酬が分配でき、人件費をコントロールすることができるのです。

報酬制度の基礎知識

日本企業にでは、年功を重視する考え方と成果を重視する考え方、どちらかが採用されていることが一般的です。

報酬制度の種類には「基本給」「能力給」「職務給」「賞与」「インセンティブ」「手当」があり、これらを組み合わせることによって、従業員と企業にとって最適な報酬制度を設計していきます。

それでは、各報酬制度についての内訳や仕組みを解説していきましょう。

基本給

基本給は月給のベースとなる基本報酬で、勤続年数や業績評価、年齢や能力によって決定します。

残業代や賞与、退職金を計算する上でのベースともなり、企業によって昇給のルールは様々です。

基本的には「人」要素と「仕事」要素に対して支給される報酬に分かれます。

勤続給や年齢給などが「人」、役割給や職務給、業績給が「仕事」要素の報酬にあたります。

また、二つの中間に職能給や技能給などが配置されます。

基本給を設定する時に異なる複数の要素を組み合わせることは、メッセージの一貫性を担保する上でも避けた方が良いでしょう。

例えば、「人」要素である勤続給と「仕事」要素である業績給といったように異なる要素を基本給に組み込むと従業員が混乱を招く原因となってしまいます。

能力給

続いて、能力給は従業員の能力や知識、スキルに応じて決定する報酬です。

専門性を証明する資格を保有しているかどうかや、従業員の成果・業績等、各企業の評価基準によって基本給に上乗せされる形で支給されることが一般的です。

職務給

三つ目は業務内容や職務の価値に応じて決定する職務給です。

組織内の役職者に対して支給される役職手当や、特殊な知見や技術を必要とする専門職に対しての報酬が該当します。

どのような職務にどれだけの職務給を設定するのか、納得性のある評価基準をあらかじめ設けておきましょう。

賞与(ボーナス)

賞与(ボーナス)は毎月支払われる定期給とは別に、企業業績や個人業績等を勘案して決定する報酬です。

日本企業においては、夏と冬に支払う企業が大半です。

とはいえ、回数やタイミングの決まりがある訳ではないため、定期給とは別にどのタイミングで何回支払っても構いません。

また、必ずしも金銭で支払う必要はなく、就業規則に則って基準を満たしていれば、支給の法的義務は問われないという特徴があります。

インセンティブ

従業員のモチベーションアップを目的にインセンティブという形で報酬を設定する方法もあります。

従業員の努力や工夫が業績に直結し、数値化しやすい営業職に対して多く導入されています。

営業職へのインセンティブに他部門や他職種の従業員が協力できるような内容にするとより良いでしょう。

インセンティブは、金銭的に支払う場合には賞与と呼ばれることが多いですが、旅行券やストックオプション付与等の様々な形態があります。

また、インセンティブには、報奨金に代表される短期的なもの、業績賞与や決算賞与等の中期的なもの、また、持株会等の長期的なものに分けて捉えることができます。

手当

これは給料とは別に支払われる、残業代や通勤・住宅手当、資格手当、退職金・年金などを指します。

実質的に、基本報酬の補完的な役割を担っています。

基本的に、成果に関係しない手当を設ける必要はありません。

なぜならこうした手当が増加することで業績と人件費の均衡が保てなくなるからです。

採用の強化や従業員の定着のために福利厚生を手厚くする企業も見受けられますが、手当を一度設けると簡単には廃止できないため、金銭的報酬以外の方法で人員の採用・定着を図れないか、自社の状況にあわせて慎重に検討しましょう。

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