評価制度設計の考え方
みなさんの会社には『評価制度』と呼ばれる仕組みはあるでしょうか。
明確な仕組みはなくとも上司が部下を評価している会社もあれば、整えられた仕組みに従い、管理目標をしっかりと立て、上司部下間のコミュニケーションを頻繁に行いながら評価している会社もあるでしょう。
成果主義という言葉が台頭していた時代には『成果をどれだけ出しているかを判定するための仕組み』という傾向が強くありましたが、近年は人材の流動性の高まりに伴い、『自社のなかでやりがいを感じて長く働いてもらうための仕組み』と捉える企業も増えています。
評価制度の目的は企業によってさまざまですが、ほかの人事制度と同様に、評価制度を設計するうえでは『何を成し得たいのか』を明確にしておくことが重要です。
一方、すでに評価制度を導入している企業では、制度に対し社員から不満の声があがり、頭を悩ませている人事担当者も多いのではないでしょうか。
たとえば、社員視点では「評価結果に公平感がない」、管理職視点では「評価基準があいまいでわかりづらい」、といった声がよく聞かれます。
これらの声を受けて制度を改定した結果、仕組みやルールが複雑になりすぎてしまい、運用負荷が高まってしまうこともしばしばあります。
評価制度設計を行う際は、何を成し得たいのかを明確にするのはもちろんのこと、現状の制度にどのような不満があがっているか、実際に運用できそうか、といった点も意識しながら設計を進めていくようにしましょう。
評価制度の概要設計
評価制度には企業によって多様な目的や狙いがあると説明しましたが、現実的に人が評価できる『観点』にはどのようなものがあるでしょうか。
人が評価できる『観点』は、成果・プロセス・能力の3つに概ね集約されます。
1つ目の『成果』は比較的イメージしやすいでしょう。
これは「ある一定期間中に、組織に対して貢献した実績・結果」を指します。
ただし、財務諸表上の数字に表れるわかりやすい成果もあれば、間接的に業績に貢献しているような成果もあります。
言葉からはイメージしやすいものの、定義する際にはひと工夫が必要な観点です。
この内容は次の動画でも詳しく解説します。
次が『プロセス』です。
これは「成果を出す過程としてどのような振る舞い・考え方が見られたか」という点を評価します。
たとえば会社として大切にしている考え方や行動が、もしかすると社訓のような形で表されている企業もあるかもしれません。
こうしたものが明確になっている場合はそのまま行動評価に適用することで、より自社の人材らしい振る舞いができていれば評価し、そうでなければ改善を促すといった使い方ができます。
昨今はリモート環境で業務を進めることも多くなってきたため、評価の難易度が上がっている観点でもあります。
最後が『能力』です。
言葉通りに解釈すると、「個人に内在している素質や頭の良さ」といったものをイメージするかもしれません。
人事評価においては、『能力』という要素は、通常、業務上発揮されている能力を指します。
たとえば、能力を表すものの1つに資格がありますが、何らかの資格を有していたとしてもそれが担当業務では求められない、もしくは発揮されない場合は期待する成果にはつながりにくいため会社として、その資格を有していることを評価する必要性は高くありません。
能力を評価する際には、単に資格の保有の有無に留まらず、実際に発揮された能力を基に評価することで、能力向上・発揮に向けたインセンティブを社員に感じてもらいやすくすることが望ましいでしょう。
一方で、その職業そのものの歴史が長く、体系化された資格があるような専門職の場合は、資格を有していることでようやく仕事ができるということもよくあります。
その場合は、必要な資格の取得・保有状況を1つの能力として評価することもあります。
このように、成果を出すことをゴールに見立て、その過程であるプロセス、そのプロセスを実行するために必要な能力、という観点があることを理解し、どの部分を評価対象として評価制度を設計すると目的の実現につながるのかを考える必要があります。