報酬制度導入時の留意点:納得性の高い周知の徹底
これまで説明してきたように報酬制度は社長を含めた経営陣や、外部コンサルタントなどと綿密な検討をした上で構築し、決定していきますが、その後、導入前にすべきことは何でしょうか?
それは決定した報酬制度を社内に周知させることです。
特に構築プロセスに関与していない従業員へ知らせ、制度に対する理解を得ることが重要になってきます。
一般的には、構築プロセスに関与していない従業員の方が大多数でしょうから、周知を図る段階でのコミュニケーションプロセスが重要となってくるでしょう。
報酬制度は、従業員のキャリア設計やモチベーション維持に密接に関わる重要事項です。
また、従業員のみならずその家族の生活や将来にも大きな影響を及ぼします。
そうした重要なことだという前提をしっかりと理解した上で、納得してもらえるコミュニケーションを検討したいものです。
報酬制度周知時の留意点①:事前の通達
例えば、新制度導入の遅くとも半年前までには制度変更によって影響が出る全従業員へ事前に通達するようにしましょう。
できれば導入予定の1年ぐらい前にするのがベスト。
また、導入時には、文書での通知だけで済ませることはおすすめできません。
対面による説明会などを開催し、
「そもそも制度改定をすることで、会社がどのような姿になることを目指しているのか」
「その目指す姿へ近づくために従業員にどのような行動を期待するのか」
といった制度改定の目的を明確化することが非常に重要です。
加えて、「制度改定は会社側の都合」と従業員に受け取られてしまいがちです。
改定によって得られる従業員の利益も的確に伝えるようにしましょう。
報酬制度周知の流れ
では、周知の流れを確認しておきましょう。
従業員への理解浸透活動のために、伝達内容の整理、担当者の決定、必要資料(処遇通知書・手引き・Q&A)や移行スケジュールの作成等の事前準備を行います。
具体的な手順としては、以下のような流れが一般的です。
尚、あなたが人事部のメンバーの場合にはくれぐれも人事部単独での動きとみられないよう、注意しましょう。
常に経営陣や経営陣に準じたリーダーたちと連携をとりながら、改定に関するコミュニケーションを図って行くことが大切です。
報酬制度運用時の留意点①:見直しができる仕組みづくり
新制度を導入した後は、運用上の不具合の修正や制度の適応範囲の拡大など、新たな課題をその都度修正しながら、定着の支援を継続します。
導入をする時だけ従業員の声の大切さを謳っておきながら、導入後は制度に対する率直な意見を収集しない、収集しても改善しない場合等があります。
しかし、こうした対応は中長期的に見ると経営陣や人事部への信頼性を失うばかりで、良いことは一つもありません。
必ず、制度運用のPDCAサイクルを構築し、稼働させる仕組みづくりを怠らないようにしましょう。
また、報酬制度は評価制度と連動して運用することが重要です。報酬は、評価を基準にして決定するため、従業員への納得感や透明性の高い報酬制度の運用について明確に説明できるようにしましょう。
報酬制度運用時の留意点②:時代やニーズに合わせ、定期的なチェックを
時代やニーズの変化と共に、評価制度に求められるものも変化します。
人事関連の法改正や、世論、従業員の声に対して常にアンテナを張り、評価制度の見直しとそれに伴う報酬制度との連動性について定期的にチェックしましょう。
繰り返しになりますが、報酬制度設計は、企業と従業員の安定を実現するために非常に重要なものです。
そのため、安易に流行りの制度だからといって導入するのではなく、自社の状況(経営理念やビジョン、中期経営計画、予算やシステム、教育環境等)や風土に合った制度を丁寧に検討し、導入するようにしましょう。