フィードバック

相手を認めるフィードバック

相手を認めるフィードバックの効果としては、主に3つあります。

1. このフィードバックを継続することで、部下のモチベーションや自己肯定感を高めることができます。

2. 良い仕事を積極的に認めることで求められていることは何か、今後何をすればいいのか、が理解できるようになり、部下が主体的に仕事をするようになります。

3, 前向きなコミュニケーションの頻度を高めることで、信頼関係を強化することもできます。

心理学では「人はコミュニケーションの頻度が高ければ高いほど愛着が湧く」とされており、頻度の向上は有効です。

このように、相手を認めるフィードバックには大きな効果が期待できるため、

積極的に行うようにしましょう。

それでは、具体的にどのように行えばよいのでしょうか・

相手を認めるフィードバックの実施方法

実践方法には、次の3種類の承認があります。

まず1つ目は、部下が立てた目標への達成度や取り組んだ活動の結果を承認する『結果承認』です。

相手を認めるフィードバックとしても最も行いやすく、ほとんどの管理職の方が意識していると思います。

一方で、仕事に厳しい方は「結果が良い場合以外は褒めるべきではない」あるいは「仕事だから結果を出すのは当然。言わなくても伝わっているだろう」と考えていることがあります。

同質性の高い社員しかいない状況であれば問題ないかもしれませんが、異なる環境から来た社員や若い世代には、考えをはっきりと言葉に出さなければ伝わりません。

結果が出なくても、取り組んだことに感謝することや次の機会に向けた良い経験だ、と伝えることが重要です。

また、最終結果だけでなく、「売上目標は達成できなかったが、誰よりも顧客訪問回数が多かった」といった成果につながるようなプロセスもバランスよく認めましょう。

2つ目は、日々の行為を承認する『行為承認』です。

「会議で積極的に発言したね!」、「資料見やすいように工夫していて良かったよ!」

など、良い行為にフォーカスして伝えます。

どのような行為に対して何が良かったかを具体的に伝えることで、仕事への理解が深まり、主体性が発揮されます。

「最近積極的だね」ではなく「この前の会議で一番に手を上げてくれたね。積極的で良かったよ!」など、具体性を持って伝えましょう。

「結果が出る前に承認してよいのか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、

良い行為を承認して促進させることでやる気や自信が生まれ、より良い結果につながります。

些細なことであっても良い点を見つけ、伝え続けましょう。

また、良い点を見つけるためには、部下の強みを理解することも重要です。

部下の改善点につい目が行ってしまい、強みを把握しきれていないことも多々あります。

まずは部下それぞれの強みを把握し、どのような場面で発揮されているかを意識することで、良い点を見つけやすくなります。

3つ目は、結果や行為に関わらず、相手を尊重して行う最も基本的な承認である『存在承認』です。

つまり「あなたがいてくれて嬉しい」ということを伝えます。

これは、個々人の成長のみならず、組織の雰囲気にも大きく影響します。

この承認には、言葉に出して伝える「言語コミュニケーション」と、言葉には出さずに訴えかける、うなずきや振る舞い全般などを指す「非言語コミュニケーション」があります。

言語コミュニケーションとしては、まずは挨拶を欠かさずに行うことです。

挨拶は基本的なことですが、業務効率が悪い組織では挨拶が十分にされていないことも多々あり、組織のリーダーが「部下が挨拶できていない」ことを改善課題として挙げることは少なくありません。

日々の挨拶に加え定期的な声がけも大切です。

「遅くまで働いているみたいだけれど、体調は大丈夫?」「お子さんが産まれたばかりだけれど、何か大変なことはない?」など、配慮のある言葉をかけます。

職場の話に限らず、相手の家族の状況などにも配慮できると「仕事のことだけを気にかけている」のではなく、「個人としても気にかけている」ことが伝わり、さらに効果的です。

非言語コミュニケーションとしては、笑顔や目線を合わせる・相槌を打つ・変化に気付くなどがあります。

また、役割を与える・相談する・じっくり話を聴くことも存在承認となります。

このような承認を直接伝えるには、面談や立ち話、移動のための隙間時間を活用するのが有効です。

メールやチャットで伝えることや、会議の場などの人前で褒めることも効果的です。

ただし、上司が部下に対して人前で行う場合は1人に対する承認行為だけが続くと、贔屓に見えるリスクもあるためバランスが重要です。

また、人によっては人前で褒められることにプレッシャーを感じる場合があることにも留意しましょう。

令和時代の若い人たちは人前で褒められることを嫌がる傾向がある、という説もあります。

その場合は、チャットツールで絵文字やスタンプ、いいね!ボタンを使うことで、プレッシャーを与えずに存在承認を伝えられるため、管理職クラスの方は積極的に活用しましょう。

とある企業で若手社員にインタビューした際、「社内のチャットで情報発信をしても先輩たちから『いいね!』の反応がなく、不安だ」という声がありました。

同じチームの管理職や中堅層へ、なぜ反応しないのか聞いたところ、「いいと思ったら『いいね!』を押すべきだと知らなかった」との回答がありました。

反応を返すようになったところ、組織の雰囲気が良くなったとの話もあります。

また、存在承認の反対は無関心で、無関心の悪い影響がわかる研究があるのでご紹介します。

まず、被験者に問題への解答を用紙に記入してもらいます。

1枚目の問題が終わったら報酬を渡し、2枚目の問題に、より少ない金額で解答しないかと尋ね、2枚目が終わったら次はさらに少ない金額で3枚目に解答しないかと尋ね、被験者が断るまで少しずつ金額を下げながらこれを続けます。

この実験を次の3つのグループで実施しました。

問題を解いてもらえた数が最も少なかったグループは、これら3つのうちのどれでしょうか。

答えは……2と3です。

何も反応しないグループ2と目の前で解答をシュレッダーにかけるグループ3が解答をやめるまでの金額はほとんど同じでした。

きちんと確認をしたグループ1は、ほかのグループの約半分の金額になるまで多くの問題を解き続けました。

この研究でわかったことは、「人の成果や行為を無視することは、解答の書かれた用紙を目の前でシュレッダーにかけることと同じぐらいよくない影響をもたらす可能性がある」ということです。

このように、相手を認めるフィードバックは、行うことで組織の雰囲気を良くすることができる一方、行わないと人間関係に大きくマイナスの影響をもたらします。

そのため、相手を認める日々のフィードバックを積み重ねることを意識しましょう。

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