2025年4月、Luvirは創業から丸6年を迎えた。社員数は20名を超え、組織としてはまさに拡大フェーズへと進んでいるタイミング。そんな節目に、改めてLuvirの現在地を見つめ直し、これからの事業や組織の方向性を話し合うビジョンミーティングが開かれた。
登壇したのは、中川CEO、岡田COO、奥地CIOの役員3名。対話のナビゲーターを務めたのは、元デロイトトーマツコンサルティング執行役員であり、Human Capital部門共同責任者として数々の組織変革を牽引してきた岡本氏だ。
岡本氏による鋭い“問い”と、それを受けて飛び出した役員らの意外な本音とは―――?
白熱したトークセッションの一部始終を、Luvirへの愛情あふれる想いも交えてたっぷりとお届けしよう。
司会進行 ◇岡本努 エグゼクティブアドバイザー |
参加メンバー ◆中川裕貴 代表取締役/CEO ◆岡田幸士 共同経営者/COO ◆奥地祐介 執行役員/CIO |
岡本努 氏【PROFILE】

同志社大学経済学部卒。神戸大学大学院国際協力研究科経済学修士。 デロイトトーマツコンサルティング合同会社における25年間のコンサルタントとしての経験を経て、2024年4月、人的資本イノベーション研究所を設立し、代表を務める。 同5月、日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員に就任。 デロイトトーマツコンサルティング合同会社では、一貫して組織・人事にフォーカスした経営コンサルティングに従事し、2021年よりHumanCapital部門共同責任者を務める。
コンサルファーム経営陣が
真剣に「コンサル続ける?」って話す夜。
「今後もコンサルティング事業を続けていきたいと考えていますか?」――座談会の冒頭で岡本氏が投げかけた問いは、あまりにも意外なものだった。コンサル会社の役員3名に、あえてこの質問を投げかけた真意とは……?

岡本:ズバリ皆さんにお聞きします。今後もコンサルティング事業を続けていきたいと考えていますか?
中川・岡田・奥地:(即答で)イエス。
岡本:答えは全員「イエス」でした。じゃあ、その理由はなんでしょう?
岡田:今の仕事に対してどう向き合っているか、みたいな話にもなりますが。僕は、どれだけビジネスを仕組み化してスケールさせても、最後に人の心を動かすのは人だと思っていて。つまり、ビジネスって何なのかを突き詰めると、コンサルの聖域に戻ってくるんですよね。人が人に働きかけるというところに。
中川:僕も同じ考えです。昔、塾を経営していた頃に実感したんですけど、生徒ってどんなに教材やプログラムが良くても、いちばん影響を受けるのは先生なんですよね。やっぱり生身の人間同士、直接対峙することで得られるものはすごく大きい。
ビジネスも教育も結局、人と人が直接向き合うからこそ、前進するし、イノベーションが起きる。だからこそ、コンサルの「人が人を変える」という本質は絶対に失くしちゃいけないなって思っています。
奥地:いいパッケージやサービスを作っても、それをお客さんに導入するプロセスには、必ず人が関わりますよね。そこには絶対にコンサルティング力が必要。
ビジネスの形がどう変わっても、この先もコンサルティングは僕たちの「コア・コンピタンス」であり続けるべきだと考えています。
岡本:奥地さんの「この先も」というのは、どれくらいのスパンを見ていますか? 10年単位くらい?
奥地:はい、少なくとも10年は続くと見ています。
もちろん、将来的にIPOみたいな大きなチャレンジを目指すときには、プラスアルファの“売り”も必要で、それがないんだったらIPOする意味もないと思っていますけど……。
そのプラスアルファをつくる過程でもコンサルティング能力は必要だし、どのビジネスにも根幹として効いてくる力なんです。
岡田:たとえば、正しい問いを立てる力とか、相手に共感して心を動かす力。そういうのって、時代がどう変わっても必要とされるスキルだと思うんですよね。
今のスタイルが永遠に通用するわけではないにしても、人を動かすという本質はきっと残り続けるんじゃないかと。
求められる「一流」の定義って?
岡本:うちのメンバーには、一流のコンサルタントを目指してもらうべきでしょうか?
中川:もちろん目指してほしいです。ただ、「一流」ってすごく幅が広いんですよね。100人いたら100通りのやり方があっていいと思っています。
コンサルって一般的には、知識やノウハウを切り売りするイメージかもしれませんが、もっと泥臭く現場に寄り添う人がいてもいいし、クリエイティブな発想で勝負する人がいてもいい。
全員が同じ型の一流を目指す必要はないんです。それに今後は時代の変化と共に、コンサルの価値も1つじゃなくなる気がします。

岡田:僕は「稼げる人」になってほしいと思っています。そのためには、自分なりの強みを持つことが大事。
ただ、それが「お客様にとって価値があるものか?」という視点を常に意識してほしいですね。
奥地:全員が基本的なコンサルスキルを持ったうえで、それぞれに何か光るものを持っている。そんなイメージで育っていってほしいです。
目指すは“指名される侍”たち
中川:たとえばここにいる岡松くんは(*オーディエンス且つ書記)、三度の飯よりエクセルが好きで、めちゃくちゃ得意なんですよ。某大手総合コンサルテイングファームの人事制度設計の案件でも、「我々のコンサルタントより優秀」だと評価されましたよね。
岡松くんのように何か突出した価値を出せる人って、本当に強い!
岡田:しかも彼はそれに加えて、顧客志向性も高いんです。ベースのスキルがあって、さらに「人にエネルギーを与える力」を持っている。そういうベース+αのあるパイル型人材をどんどん育てていきたいですね。
岡本:コンサルティング能力を持った人を育て続けるのは、とても大変だよ。僕が「コンサルを続けますか?」と聞いたのは、僕自身が25年間やってきて、それが一番苦しかったことだから。
コンサルとして仕上がっている人なんて、実はほんの一握りしかいなかったりします。自分たちもまだまだ努力が必要で、お客様からお金をもらう価値がある人を育てないと意味がないよね?
だからこそ、どうケイパビリティを高めるかが課題になってくるわけですが。
中川:僕は正直、うちに必要なケイパビリティの定義が難しいと思っていて。定義次第で育成の方向性も大きく変わるので、まずはそこを固めるのが重要かなと思っています。
岡田:僕はいま、「巨人の肩に乗る」発想で外部の力をどんどん取り入れていこうと考えています。コンサルタントだけで完結するんじゃなくて、AIや型(フレームワーク)も組み合わせていきたい。
そのうえで、コンサルタントして必要な能力をどうやって身につけていくか、ということもプログラム化していきます。AI×型×人材育成の3つを組み合わせる感じで。

岡本:AIはサービスの精度を上げるにはいいですよね。でも人材育成となると、どうだろう。AIを使わないことで、思考力や文章力が研ぎ澄まされることもあるから、工夫が必要では?
岡田:今後の方向性としては、たとえばワードだけで徹底的に思考を書き出して、それをAIにぶつけてフィードバックをもらうというやり方もアリかなと思っていて。プロジェクトマネジメントはフィードバックの機会が限られてるので、そんなやり方なら、AIも育成に活用できるかもしれません。
岡本:なるほど。結局プロジェクトマネジメントでも、フィードバックを受ける機会って限られるからね。年間200日働くと仮定しても、人間同士なら400回くらいしかレビューできないけど、AIなら4000回できる。10年分の経験が1年で積める可能性もあるわけだ。
岡田:そうやってAIに学習させて、さらにそのAIを使って人も鍛える。このサイクルが回れば最強だなと思ってます。
奥地:結局、何が人を成長させるかというと、経験しかないと思っています。内省してPDCAを回すことも大事ですが、まずは圧倒的に経験量を増やさないといけない。
今は働き方改革もあって時間が限られているので、いかに疑似体験も含めて経験機会を増やすかが勝負。そこで、1つのプロジェクトだけではなく、複数のプロジェクトに関わって疑似体験できるような仕組みも整えたい。今の会社の規模なら、それも十分可能だと思っています。
ダイナミズムを味わうために、ここへ来た
岡本:とはいえ、経験量やテクノロジー活用だけなら、もっと上手にやっているファームもありそうですよね。うちの強みって、どこなんでしょうか?
岡田:採用基準の話になるんですが、「他者にエネルギーを与えられるか」という観点をすごく重視しています。この人といるとワクワクする、元気になれる──そういう力って、じわじわ効いてくるんですよ。
以前、コンペの場面で、大手ファームではなくうちが選ばれたことがありました。理由は、「この人たちと仕事をしたい」と思ってもらえたから。
中川:最終的な勝因が“人間的な魅力”っていうのは、すごくLuvirらしいですね。
岡本:ところで、なぜ皆さんはが大手ファームを抜けて、リスクを取ってまで小さい組織に来たんですか?
中川:自分が没入できるダイナミズムを味わいたいと思ったからです。
まさに岡本さんが25年で経験されたことで、何もないところから作るっのて、すごいエネルギーの塊ですよね? 安定とは真逆で、成功も失敗も自分のせい。それは出来上がった大組織では絶対に味わえません。
岡田:組織内の比率を説明した「262の法則」ってありますよね。どのような組織でも、収益や実績・生産性を上げる上位集団が2割、平均的な集団が6割、意欲の低い下位集団が2割という。でも、それってどうなんだろうと常々思っていて。本当は全員が上位集団の、やる気も能力もウィルも揃ったメンバーだけで組織を作れたら最高じゃないですか?
僕は『七人の侍』という映画が好きなので、あの登場人物みたいに全員が戦える力を持っていて、クライアントから指名される集団にしたい。Luvirなら、それが実現できると信じています。
奥地:実は大手のパートナークラスにさえ、心からビジョンを語れる人は少なかったんです。だけど、中川さんや岡田さんは「自分たちはこういう世界を実現したい」とか、「こういう課題を解決したい」と、ずっと言い続けていますよね。
たとえ規模は小さくても、ここには人間的な魅力やビジョンを持ったメンバーがいる。それがLuvirに来た一番の理由です。

中川:僕は究極、「ワクワクする人とワクワクすることをしたい」。それだけかも。
コンサルにとどまらない、
広がる未来の選択肢
岡本:もっと踏み込んだオリジナルな何かがないと、本当にワクワクできないんじゃないかな? 中川さんが今の時点で思う、「Luvirの“売り”」は?
中川:正直に言うと、僕ら自身もまだそこが明確じゃない部分があるんです。
コンサルが基盤事業ではあるけれども、それはあくまでも「人と組織に灯を」というミッションを実現するための、手段の一つだと思っていて。実現するために必要であれば新しいサービスや事業にもチャレンジするし、会社を買収するかもしれない。
だけどその中でも決めていることは、単なる思いつきで終わらせるのではなく、「自分たちらしさ」を持って形にしていきたいということです。
どこの企業と組むのか、どの会社を買収するのか、どんなサービスを展開していくのか。まだ固まっていないという意味では課題かもしれません。しかし、そんなに短時間で決めるべきものではないとも思っているので。
岡本:つまり、コンサルで稼ぎながら、新規事業の準備をしてるわけですよね?
中川:そうです。状況はこれからも変化していくだろうけど、どんな未来や選択肢にも、自分たちから飛び込んでチャレンジしたい。その時に備えて、ちゃんと戦える状態を作っていきます。
岡本:「それっていつできるの?組織が何名になったらできるの?おそらく1年後も3年後も同じこと言ってそう。というのも僕がデロイトにいたとき……」