各業界の第一線で活躍する人物に、仕事への向き合い方から、人生哲学までも聞く本対談。今回、Luvir Consulting代表の中川裕貴が話を聞いたのは、株式会社ユーポス代表取締役、株式会社ロードカー代表取締役、株式会社ベイオーク代表取締役会長を務める柏原隆宏氏だ。
ユーポスは、オークション会場「ベイオーク」と連携した流通システムを強みに、関西を中心に全国80店舗以上のネットワークを広げ、現在もさらなる店舗網の拡大を見据えている。
第1回では、柏原氏の経営観を知る入口として、ユーポスという事業そのものに目を向けた。中古車買取は、一般ユーザーにとって「その査定額が本当に妥当なのか」が見えにくい領域でもある。そうした中で同社は、どのような仕組みを築き、顧客の納得につなげてきたのか。ユーポスの成り立ちやFC展開、そして変化する車業界の中で柏原氏が見据える“信頼される流通”のあり方に迫る。
| ●柏原隆宏氏 プロフィール 株式会社ユーポス代表取締役/株式会社ロードカー代表取締役/株式会社ベイオーク代表取締役会長 1972年、大阪府泉佐野市生まれ。建設会社勤務を経て、2003年5月に(株)ロードカーへ入社。(株)ロードカーは祖父の代から続く自動車関連企業で、柏原氏は現場経験を重ねながら経営に携わるようになる。2009年9月に東京ユーポス代表取締役、2010年6月に(株)ロードカー代表取締役、2013年5月に(株)ユーポス代表取締役に就任。2023年5月に(株)ベイオーク取締役、2024年4月に同社代表取締役社長に就任。現在は代表取締役会長を務める。 ユーポスは、1967年に大阪府貝塚市で創業したロードカーを母体に、中古車買取、自動車販売、カーリース、保険事業など、自動車に関わる幅広い事業を展開。オークション会場・ベイオークと連携した中古車流通システムを強みに、全国80店舗以上のネットワークを築いている。 また、2014年に「ユーポス未来号プロジェクト」を発足。海外への中古車寄贈など社会貢献活動にも取り組む。近年は健康経営にも力を入れ、社員の働きやすさと顧客満足度の両立を目指した経営を推進中。 ●コーポレートサイト https://www.u-pohs.co.jp/ |
| ●司会進行 Luvir Consulting株式会社 中川裕貴 代表取締役/CEO |
オークション会場から始まった
「ユーポス」という仕組み
――はじめまして、Luvir Consultingの中川です。この企画では、各業界の第一線でご活躍されている方々にお話を伺っています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
柏原社長:こちらこそよろしくお願いします。
中川さんの会社はコンサルをされているんですね?
――そうです。僕自身、もともとはデロイト トーマツ コンサルティングにいて、人事制度をつくったり、会社が合併したときに制度や業務を統合したりといった支援をしていました。
柏原社長:コンサルって聞くと、それだけで賢い人なんやろうなと思いますよ。

――いえいえ、そんなことはありません。ただ、外から経営を支援する立場と、事業会社の中で実際に動かす立場の両方を経験して、コンサルタントと事業家では見ている景色がまったく違うなと感じるようになりました。
だからこそ本日は、実際に複数の事業を率いてこられた柏原社長に、まずはユーポスの事業について伺いながら、経営者として大切にされていることや、仕事の中での気づきについても、あまり堅苦しくなくお聞きできればと思っています。
柏原社長:堅苦しい話は僕も苦手なので、その方がありがたいですよ(笑)
――早速ですが、まずはユーポスさんのビジネスモデル・事業内容について教えていただけますか。
柏原社長:ユーポスは、車買取専門店「ユーポス」を展開するフランチャイズ本部です。事業としては、一般のお客様からの買取が中心です。業者さんからの買取や、販売も一部行っていますが、基本的には自動車買取専門店という位置づけになります。
一方で、ロードカーもユーポスのフランチャイジーとして店舗を運営しています。ロードカーはユーポスの株主でもあるので、関係性は少し複雑かもしれません。
――ユーポスさんとロードカーさんは、フランチャイズだけでなく資本面でもつながっている、と。その背景には、ベイオークさんとの関係もあるのでしょうか。
柏原社長:ベイオークは大阪・南港にある車のオークション会場です。もともと中古車販売店の組合があり、その一事業として、一般のお客様から買い取った車を買取オークションに出品する仕組みが生まれました。それがユーポスの始まりです。
つまり、オークションに出品する車を増やすために買取事業が始まったわけです。 現在も、お客様から買い取った車をオークションに出品するという点で、ユーポスとオークションは深くつながっています。
査定額の「なぜ?」に答える
オークション相場という裏づけ
――ユーポスさんは、単に車を買い取るだけではなく、その先のオークションまで含めて中古車流通を見ているということですね。査定額を考えるうえでも、実際の相場をどう捉えるかが重要になりそうです。
柏原社長:中古車の価格は日々変わるので、相場をどう見て、お客様にどう提示するかはとても大事なんです。
お客様から買い取った車は、その後オークションに出品されます。ですからユーポスは、「この車が実際に市場でどのくらい評価されるのか」「今どのくらいの価格で取引されているのか」などを、日々のオークション相場を通じて見ています。
そのため、年式や走行距離だけで判断するのではなく、実際の取引相場や車ごとの需要を踏まえた査定につなげやすい。そこは、オークション会場との連携から生まれた、ユーポスならではの強みだと思います。

――実際の市場価格を踏まえて査定できるからこそ、お客様にとっても納得しやすい。中古車買取において、大きな安心材料になりますね。
柏原社長:車を売る機会は、そう何度もあるわけではないので。お客様に「ここなら任せられる」と感じていただけるよう努力してきました。
ユーポスは2024年3月決算時点で、全国に89店舗を展開しています。お近くに店舗があれば店頭で査定を受けていただけますし、店舗まで来られない方には出張査定で対応しています。
――地域や状況に合わせて査定方法を選べることは、お客様にとって安心材料ですね。
柏原社長:そうですね。お客様によって事情はさまざまですから、査定方法を選んでいただけることは、安心してご相談いただくうえでも欠かせない部分だと思っています。
また、買取代金を最短で翌日にお振り込みできる点も特徴のひとつです。
――2011年9月までに関東・九州・東北・沖縄エリアへ進出されていますが、やはり関西が強いのでしょうか。
柏原社長:関西ではテレビCMも展開していますし、ユーポスという名前もある程度知っていただいていますからね。
一方で、関東ではテレビCMを大きく打つというより、一括査定サービスなどを活用した出張査定型の動きを中心にやってきました。広告費が高いので、地域ごとにやり方を変えています。
現在は福岡でもテレビCMを放映していて、次は岡山や香川など、中国・四国エリアにも広げていく考えです。まずはユーポス全体で100店舗を目指します。 ただし、店舗数だけではなく、FC本部として全国に広げていくことに意味があると思っています。
加盟店が続けやすい仕組みをつくる
――フランチャイジーのオーナーさんにとって、ユーポスを選ぶ理由はどこにあると思われますか。
柏原社長:関西で言えば、やはり多少の認知度があることは大きいと思います。大手さんほどではないかもしれませんが、関西ではユーポスという名前を知っていただいている方も多いので。
それから、ロイヤリティがそこまで高くないこともあるかもしれません。
――仕組みとしての強みは。
柏原社長:Aシステムというものがあります。簡単に言うと、加盟店さんがお客様から車を買い取って、その車をオークションに出す。その代金を回収する流れの中で、加盟店さんが大きな資金負担を抱えにくいようにしている仕組みです。
たとえば、お客様から100万円で車を買うとしますよね。その車をオークションに出して、オークションから代金を回収する。そこを本部側でも支えるので、加盟店さんとしては運転資金があれば運営しやすい。 FC本部としては、加盟店さんが続けやすい仕組みをつくることが大事だと思っています。
車業界が変わっても最後に残るのは
「お客様との関係性」

――そうした仕組みで加盟店を支えながら、地域ごとに店舗を広げてこられた。では、今後の展開についても伺いたいです。
店舗を構えるビジネスは、どうしても商圏が限られるところがありますよね。1店舗あたりのキャパシティや売上の上限も、ある程度見えてくる。一方で現在は、ネットで物が売れる時代です。そう考えると、実店舗を持ちながら成長を続けているというのは、本当にすごいことだなと思うんです。
柏原社長は、車買取の事業は今後どのように変わっていくと見ていますか?
柏原社長:車業界、車そのものがかなり変わっていくでしょう。CASEという言葉がありますが、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化――そういう変化はこれからも進んでいくと思います。
ディーラーのあり方も変わるだろうし、買取事業も、店舗型ではなくネットで完結するような流れが出てくるかもしれません。
とはいえ、先を読みすぎて変な方向に行ってしまうのはよろしくない。 僕たちはお客様と対面で接点を持っています。極端な話、もし将来「車をやめて明日からパンを売ります」となったとしても、お客様との深い信頼関係があれば、次につながる可能性もあると思うんです。
「車屋」として、どこまで広げていくか
――僕たちがコンサルティングの現場でよくご相談いただくのが、「連続的な成長」と「非連続的な成長」の話です。
既存のビジネスを100から110、120へ伸ばしていく成長もある一方で、業界が成熟してくると、それだけではなかなか伸ばしにくい場面も出てくる。そうなると、まったく違う領域に出るのか、あるいは自社が持っている人材や技術、顧客接点といった資産を活かして別の“ゲーム”を始めるのか。そこは経営者によって考え方が分かれるところだと思っています。
柏原社長の場合は、どちらに重心を置かれているのか興味があります。
柏原社長:いろいろやってみたいとは思いますし、現在ロードカーで運営している結婚相談所も、その一つです。車とは全く違う分野ですが、とても喜んでいただけて、人と人をつなぐという意味でも同じですから。
ただ自分としては、基本はやっぱり“車屋”だと思っています。領域を広げるなら車に関わることでありたいな、と。
先ほど、車を売る機会はそう多くないという話をしましたが、一方で、1年で乗り換える方や、もっと短い方もいらっしゃるんです。しかも、長くやっている店舗ほどリピーターのお客様が多い。
車を売る・買うという一度きりの接点で終わらせず、次も相談していただける関係をどうつくっていけるか。今後は、そういったことをより大事にしていきたいという考えです。

――いろいろな可能性を見ながらも、やはり「車」という軸に戻る。しかし柏原社長が見ておられるのは、車そのものだけではなく、その先にいるお客様との関係なのだと感じました。 次回もどうぞよろしくお願いします。
【次回予告】
柏原氏の言葉から見えてきたのは、仕組みだけでは語れない経営の姿勢だった。車業界が変化しても、最後に残るのはお客様との関係性。店舗数やシステムの先にあるのは、やはり人と人との信頼である。
では、そうした考え方はどのように培われてきたのか。
次回は、柏原氏自身の歩み、事業承継の中で得た学び、そして周囲の声を聞きながら決める“等身大のリーダーシップ”に迫っていく。