2026.03.25 ニュース

Luvir Consulting × OVER20&Company.対談
“若者の挑戦が未来を変える” playfulな社会のつくり方

Luvir Consulting × OVER20&Company.対談<br>“若者の挑戦が未来を変える” playfulな社会のつくり方

「若者の挑戦が未来をつくる」——そう語られる一方で、挑戦を望みながら失敗が許容されず、理念と現実が噛み合わない状況は少なくない。 

Luvir Consultingは「職場を真剣な遊び場に」というビジョンを掲げ、企業の内側から“挑戦できる構造”をつくってきた。 

OVER20&Company.は1829歳の若者に挑戦機会を無償で届け、まだ言語化されていない可能性にも寄り添ってきた。 

手段は違っても、その先に描く未来は同じだ。 

 ――“若者が挑戦できる社会”を当たり前にすること―― 

なぜ、20代の挑戦は続かないのか。 

なぜ、企業は挑戦を歓迎すると言いながら、その構造が追いつかないのか。 

今回の対談では、「Playfulな社会のつくり方」をテーマに、若者が挑戦し続けられる環境をどう整えていくのかを、構造と文化の両側から探っていく。 

そして最後に両者が見据えるのは、挑戦を「仕掛け」として社会に実装するための、次なる共創のプロトタイプだ。 

若者はなぜ“挑戦しにくい”のか? 

Luvir Consultingの奥地と、OVER20&Company.の糸井氏。 

異なるキャリアを歩んできた2人だが、共通しているのは、若者の置かれる環境に対する強い問題意識だ。 

第1回では、両者がなぜ“若者の挑戦”にこだわり続けてきたのか、その原点と哲学を探っていく

●糸井達哉氏 プロフィール 
(株)OVER20&Company. 代表取締役社長  PROJECT any 事業責任者 
 
1995年生まれ。2018年一橋大学経済学部卒業。 
同年、独立行政法人都市再生機構(UR)に入構し、都市・社会基盤の現場に携わる。しかし、「未来を創る可能性ある20代そのものの可能性を最大化したい」という想いから、2020年に株式会社OVER20&Company.へ参画。エグゼクティブメンターとして、トリドールホールディングスやJリーグクラブチームへの企業コンサルティングに従事。組織変革や人材育成の現場に立ちながら、“個の可能性”と“社会構造”をつなぐ挑戦を続けてきた。 
2022年、同社内新規事業として「PROJECT any(プロジェクトエニー)」を立ち上げ、事業責任者・共同代表に就任。 
現在は、株式会社OVER20&Company.代表取締役として「20代から、世界を変える」をステートメントに掲げ、若者向け教育事業を展開。社会全体で次世代を支える“共創モデル”の確立に挑んでいる。 
●奥地祐介 プロフィール 
(株)Luvir Consulting CCO 

 
神戸大学法学部卒。琉球大学法文学部法務研究科修了。 
資格・公務員試験予備校の講師や講座設計、保育園事業、大学のキャリア支援、就労困難者の就職支援、大人の学びなおしなど、教育領域におけるゆりかごから墓場まで、個人の成長機会を創出する現場を横断的に担ってきた。 
その後、いわゆるBIG4、総合コンサルティングファームにて組織・人事領域のコンサルティングに従事。戦略と組織・人をつなぐ支援を中心に、HCD(Human Centered Design)をコンセプトに企業変革に関わる。 

2025年3月よりLuvir ConsultingにCCOとして参画。PMVV策定・伝播・浸透から、人事戦略立案、組織構造設計、人事制度設計、チェンジマネジメント、企業文化改革・組織風土改革まで、社会と企業(組織)と人とのつながりの再構築を志向している。これら一連の実践の基盤にあるのがHCD(Human Centered Design)の考え方で、単なる制度構築ではなく、一人ひとりが力を発揮しやすい場づくりを重視している。 
対談参加者 
・奥地祐介 
・糸井達哉 
 
司会進行 
・山本慎也(Luvir Consulting) 

人と組織に灯をともす。
playfulを社会に実装するための新たな挑戦 

山本:本日はゲストにOVER20&Company.の糸井さんをお迎えしています。 

奥地:この対談では、「若者が挑戦し続けられる環境をどう整えていくのか」を、糸井さんと一緒に探っていきたいと思います。 

堅苦しさ抜きで、ざっくばらんにやりましょう。 

糸井:よろしくお願いします。 

山本:早速ですが、自己紹介と現在の取り組みについて教えてください。 

奥地:Luvir Consultingは「人と組織に灯を」をミッションに掲げ、“職場を真剣な遊び場に”というビジョンを置いています。中心にあるのは「playful」という概念。 

ただ、これは人によって解釈が少しずつ違うんです。その違いを踏まえたうえで、どうすればplayfulな状態をつくれるのかを模索してきました。 

現在はコンサルティングが主な提供形態ですが、それもplayful を実装するための一手段にすぎません。世界にplayful を届けようとするなら、もっと多様なアプローチが必要であり、その試みの一つが今回のプロジェクトであるConsulting for JAPAN(以下「CFJ」です。 

具体的には、地域企業と学生をつなぎ、双方をplayful にしていく取り組みで、Luvirの思想を体現できるプロジェクトになると考えています。 

背景には、今の日本が抱える「二つの格差」への問題意識があります。 

まず企業側ですが、多くの中小企業が資金や情報の制約から、解決策がわかっていても動けない「知のアクセス格差」に直面しています。一方で学生側は、優秀な人ほど社会貢献の意欲が高いのに、教育現場では学術的な知識を学ぶことはできますが、現場で『価値を生み出す力』を学ぶ機会を失っています。 

この両者を繋ぎ、コンサルティングスキルを一部の特権ではなく、誰もが活用できる「共通資産」へと民主化していく。そうすることで、スキルが人に宿り、地域全体に挑戦の灯がともるような共創型プラットフォームを目指しています。 

PROJECT anyは「20代から、世界を変える」 

山本:OVER20&Company.は姉弟で経営されているそうですね。 

糸井:はい。もとは母と姉が立ち上げた会社です。私自身は創業の数年後にジョインし、現在は姉と私で運営しています。 

母はキャリアコンサルタントの第一期合格者で、キャリコン向けのコミュニケーション研修を始めたところに、姉が着目しました。 

姉はちょうどその頃、メグ・ジェイ氏の著作『人生は20代で決まる』に触れ、アメリカでは大学生もカウンセリングルームに通い、日々抱える葛藤やトラブルを通じて自身の将来に目を向けられる環境が日本よりもずっと進んでいることを知ったんです。そこで、「日本の若者にも、自分の人生を考えられるパーソナルな空間があれば世界はもっと良くなる!」と考えたことが創業のきっかけになりました。 

山本:お母様の専門性とお姉様の問題意識、この掛け合わせで会社が立ち上がったわけですね。 

そこから事業としては、どのように広がっていったのでしょうか。 

糸井:ステートメントは「20代から、世界を変える」。文字通り、若者が自身の可能性を信じて挑戦する意思決定をサポートしています。 

企業向けには、若手社員と1on1で向き合う伴走型プログラム「メンターワークアウト」を提供。これは、自分の価値観や将来の選択肢を整理し、“いま働いている環境で、どう成長し、どうチャレンジしていくのか”まで一緒に言語化することを通じ、若手人材の自律型人材への成長支援を行っています。

そして今回、「PROJECT any」は、18〜29歳に無償で挑戦機会を届けるプロジェクトで、3年半前に始動しました。 

すでに約850名が参加していて、参加者は必ず「SEARCH MYSELF~EQトレーニング~」と呼ばれる自己内省プログラムを受講し、自分の価値観を自分の言葉で掘り起こすことを大切にしています。 

同時に、PROJECT anyは“次世代人的資本を社会全体で育てる”ことを掲げ、個人・企業・行政・大学などと共創するエコシステムになっています。 

提供しているのは、ビジョンの言語化を支援するEQトレーニング、就活目的ではないリアルな社会実践の場、そしてここでしか生まれない二次的なつながり。こうした機会を通じて、世代間断絶の超越や、民間主導の教育循環、さらには自己肯定感や“日本ならできる”という感覚まで高めていくことを目指しています。 

常にその時代の若い世代がワクワクして未来を描ける——そんな“ヒトのサステナビリティ”をつくることが、PROJECT anyの根幹にあります。 

奥地:メンターワークアウトは、1対2やグループ形式で行う形も選べたと思いますが、1対1にこだわったのは?  

糸井:私たちの原点は“自分の夢や挑戦、感情をむき出しにした本音が語れる場が圧倒的に少ない”という違和感でした。自分の挑戦が受け入れられる経験がない人からすると、2名以上に共有する心理的ハードルを感じる方もいますので、1対1から始めています。 

奥地:なるほど。価値観や感情のいちばん深い部分まで向き合うとなると、1対1という形はベストかもしれませんね。 

原点にあった“違和感” なぜ若者支援を始めたのか 

――対談は、2人の原体験へと移っていく。OVER20&Company.が若者を対象に事業を始めた背景には、創業者の石堂里佳氏が目撃した“ある光景”が大きく影響していた。 

糸井:先ほど「パーソナルな空間が足りない」と触れましたが、そのきっかけになったのは、創業者の石堂が大学時代に目にした“ひとつの光景”です。 

姉は大学時代にはキラキラしていた先輩たちが社会人になり1年もすると、別人のように覇気がなくなっていたと話していました。 

奥地:「あんなに輝いていた先輩たちが、どうして」って? 

糸井:そうなんです。さらに就職活動における画一化(服装・黒髪など)に対する違和感から、自分らしさを失いそうになったと。 

そんな経験が重なって、若者が安心して自分の人生と向き合える場所が必要だと痛感し、会社を興す流れにつながったのです。 

そして、実は私自身も“空気に合わせてしまう感じ”を20代で経験しています。 

前職時代、最初の歓迎会でのことです。部長が冗談めかして「糸井さんも、こんな時代だからいつまでURにいるかわからないね」と言ったところ、ある方がすごい剣幕で「そんな冗談、言わないでください!」って……。 

URのことは今でも大好きですが、その瞬間、「ここに自分のキャリアの話ができる場所は、ほとんどないんだ」と思ったんです。 

奥地:それはキツい。でも、歓迎会で感じ取るのはすごいですよ。  

――一方、奥地の原点は「自由に決めて動けた20代」だったが……。 

奥地:私が20代の頃に働いていた企業は、やりたいことを自分で決めて動けるところだったんです。ところがその後、コンサルとして複数の企業に入って驚きました。若手ばかりか、40〜50代の管理職や経営陣でさえ、意思決定の経験を積めないまま社会に立っていたから。 

では、なぜ意思決定できない大人がこれほど増えているのか。 

その答えは、教育・仕事・社会の断絶にあると思っています。 

教育は“正解を教える場”。一方、仕事は“正解のない問いに挑む場”。 

このギャップが埋まらないまま大人になると、目の前の仕事が“社会のどこにつながっているのか”が見えなくなる。仕事の価値が見えなければ、挑戦する理由も育ちません。 

そんな状況を変えるためにも、安心して試せる環境や、自分と向き合える場が必要なんです。 

そして、実はこの話は、突き詰めると“幼児期の学び”に戻っていくと思っていて。人が意思決定できるようになるための“土台”は、ごく幼い段階から形成されますから。 

糸井:ごく早い段階での学びが重要だということですね。ちなみに、それはどのように事業としてアプローチしていくのでしょう? 

奥地:本音を言えば、幼稚園や小学校を作るところから関わりたいのですが……その領域はビジネスとして扱うのがすごく難しい。 

現実的には、いま自分が関われる場所から少しずつ“原点に寄せていく”ようなイメージで取り組んでいます。 

山本:これまでの話につながるのですが、そもそも、なぜ若者なのか、なぜ20代なのでしょう?  

糸井:30代以降になると人脈も経験も増えて、できることが広がっていきますよね。一方で10代・20代は、無鉄砲に突っ込んでいったり、ちょっと大きなことを言いがちだったり。でも、そういう“前に転がっていく力”は、彼らにしか出せないもので、だからこそ突破できるものがあると思うんです。 

こうした20代の持つ新しい視点や価値観が、それ以外の各世代の持つ強み(“経験”とか“進め方の勘どころ”など)と掛け合わさったら、まだ見ぬ価値観やイノベーションが生まれるんだろうなと期待しています。 

だから私たちは、20代に対して、自分が自分で在れる『ゼロプレイス(;自身の夢や理想を掲げられる空間)』と、その価値観や“なんとなくこうしたい”という感覚を、メンターとの対話を通して少しずつ言葉にしていく空間を提供することで20代を支援しています。 

若い人の持つ個性やユニークさは、社会経験や暗黙の了解、多数決に負けてしまうことが多いですが、言葉を武器にすることで、巻き込める人が増えると考えています。 

山本:PROJECT anyの対象年齢が18〜29歳なのは、どういう理由があるのでしょうか。 

糸井:年齢が若いほど家庭や親の影響を強く受けますよね。一方、18歳~19歳――とくに大学生になると進学や下宿などで生活環境が変わり、まず家庭と物理的な距離が生まれる。この距離がすごく大事で、“自分の人生を自分で決める”感覚が、ようやく自然に立ち上がってくるわけです。 

私たちの支援がいちばん力を発揮するのは、このタイミングだと思っています。 

奥地:なるほど。自分の人生の基盤を自分で築き始める時期だからこそ、価値観の言語化が効く。そして、その一歩が自己実現のプロセスにつながっていくと。 

そう考えると、18〜29歳にフォーカスする理由は腑に落ちます。 

――対談は、若者支援において重要なキーワードへと進んでいく。それは「自尊心」だ。 

奥地:いまの20代は「失敗してはいけない」という空気の中で育ってきていますよね。だからこそ我々は、彼らに“失敗してもいい”という前提をつくってあげたい。安心して挑戦でき、失敗も経験として語れること。それが健全な成長につながるはずです。 

糸井:本当にそう思います。 

最近、オンラインで「私、すごく幸せです!」と発信する若い人が増えていますが、どこか無理をしているように見えるんです。 

ありのままの自分を受け止める土台がなければ、一歩目は踏み出しにくいものです。だからこそ、私たちは若者の自尊心を丁寧に扱っていいきたいと考えています。 

奥地:マズローの欲求段階でいえば、承認が満たされて初めて自己実現に向かえるわけで。自尊心は挑戦のエンジンそのものなんですよね。 

糸井:しかも自尊心が低いと、自分よりも優秀な部下の意見を採用しないとか、足を引っ張るとか……大人になるほど悪い影響が出てしまう。 

豊かな自尊心を持った大人が増えてほしいと、心から思います。 

【次回予告】

第2回では、両社が目指す「理想の社会像」を深掘りする。 

働くことと生きることの一致とは何か。経済・社会・個人の循環をどう変えていくのか。そして、CFJとPROJECT anyそれぞれ描く未来へ踏み込んでいく。