2025.12.25 ニュース

【vol.03】「セクシーフットボール」       野洲高校の優勝メンバー、元Jリーガーの村田和哉に聞く!        挑戦は人をどこまで走らせるのか

【vol.03】「セクシーフットボール」       野洲高校の優勝メンバー、元Jリーガーの村田和哉に聞く!        挑戦は人をどこまで走らせるのか

村田和哉の挑戦は、県リーグを勝ち上がることだけではない。滋賀に「新しいサッカー文化」を育て、子どもたちに“夢へのアクセス”を増やし、挑戦する大人を増やすこと。そして、スポーツを街の装置として活かし、地域全体が「三方よし」の精神で循環していく未来だ。

最終回では、サッカーを“街の装置”として機能させながら、ビジネス・教育・街づくりへと広がる現在進行形の取り組みに迫った。

――前回は、ゼロから会社とクラブを立ち上げていく創業期のストーリーを伺いました。夢を描く大人が自らの足でそれを現実にしていく姿は、すでに滋賀の未来を変え始めています。では、ここから先のクラブと滋賀は、どこへ向かうのか? いよいよ未来の話へと入っていきます。

まずは現在のクラブの体制について伺いたいです。どのようなメンバーで戦っているのでしょうか。

村田:現在25〜30人ほどの選手がいて、多くは一度サッカーから離れた社会人です。

昼は銀行、市役所、地元企業などで働き、夜は20〜22時半までビッグレイクで練習するというスケジュール。土日は試合だけでなく、県内イベントや学校訪問にも参加します。

選手が子どもたちから「サイン書いて」「写真撮って」と言われている姿を見ると、感慨深いものありますよ。なぜなら、彼らは子供たちにとって、“挑戦する大人”のロールモデルになっているから。

そういう大人に出会える場が滋賀には必要で、我々が提供したい価値なんです。

──地域との連携については?

村田:柱になっているのが「しがのわプロジェクト」です。これはスポーツを通じて学校・行政・企業・住民がつながっていく取り組みで、その中心となるのが前回お話した「夢授業」なんです。

滋賀には既存のサッカークラブがありますが、僕たちがブレずに貫いてきたのは、滋賀に新しいサッカー文化を育てていくという姿勢です。

既存クラブとの競争ではなく、子どもたちが夢を描き、地域の人たちが誇りを持てる――そんな“街の土台づくり”から関わるクラブを目指しています。

なお、「しがのわ」の活動では、「夢なんてない」「挑戦しても無駄だと思っていた」と口にしていた子が、自分の未来を語り出す瞬間に、何度も立ち会ってきました。

数字ベースでは、県内88校以上、のべ2万7,000人を超える子どもたちと出会い、小さな変化の芽が確かに育ち始めていると感じています。

――地域の文化づくりを土台にする姿勢、とても腑に落ちました。滋賀といえば「近江商人の三方よし」の精神があります。村田さんのクラブづくりにも通じる部分はありますか?

村田:もちろんあります。クラブだけが良い思いをする形には絶対したくない。お客様にも、地域にも価値が生まれる関係を築き、スポンサーさんには「ありがとう」と言われる組織でありたい。

スポーツには街を元気にする力があるからこそ、その力を循環させたいんです。

──その思想は、ビジネスの現場にも応用できそうですね。人材育成という観点からも。

村田:僕が一番大切にしているのは、相手の可能性を100%信じることです。

たとえば練習に来られなくなる選手がいても、「絶対戻ってこい」「ここで終わるのはもったいない」と声をかけ続けます。

自分を信じてくれる人が一人いるだけで、人はまた前を向ける。

スポーツでも仕事でも、その原理は同じではないでしょうか。

勝利=目的ではないからこそ強くなる

――では最後に、ヴィアベンテン滋賀が目指す未来を教えてください。

村田:まずは滋賀県リーグから関西リーグへ着実に進むこと。そして将来的には、もちろんJリーグ参入を狙っています。

でも、それはゴールではなく、あくまで通過点。

僕たちが本当にやりたいのは、スポーツの力で滋賀という街そのものを、もっとワクワクする場所にすることなんです。

子どもたちが「ヴィアベンテンに入りたい」と目を輝かせて、地域が「このクラブと一緒に街を盛り上げたい」と誇りを持てる。

そして滋賀発の物語が人を動かし、街を動かし、やがて海を越えて届いていく――そんな未来を実現したい。

まだ序章に過ぎませんが、僕らは本気でそれを目指しています。

――村田さんの挑戦が、日本のスポーツ文化、そして地方の元気の新しいモデルになることを心から期待しています。

今回の対談は、スポーツの枠をはるかに超えて、地域づくり・人づくりの本質に触れる、示唆に富んだ時間となりました。

ご自身の経験を真摯に、そして未来への確かな視点をもって語ってくださった村田さんに、心より感謝申し上げます。

本日は素晴らしい時間をありがとうございました!

ここからは、私自身が今回の対談を通じて感じたことを整理し、読者の皆さまに共有したいと思います。

◇メガネ社長の編集後記

『「没頭」こそが、人を巻き込む最強の引力である』

今回のゲスト、村田さんとは1988年生まれの同級生。かつてサッカー少年だった私にとって、野洲高校の「セクシーフットボール」は憧れの象徴であり、彼らが全国制覇を成し遂げた瞬間の衝撃は今も色褪せません。

時を経て、次なる大きなフィールドでチャレンジされる村田さんとの対談は、リーダーシップの本質を突く熱い時間となりました。

~「思想で人を動かす」を体現する生き方~

高校時代、恩師である山本監督の言葉と背中に、「いつか自分も思想で人を動かせる大人になりたい」と誓ったという村田さん。今回の対談を通じて痛感したのは、その誓いを高い純度で体現していたことです。

「サッカーを通じて滋賀の街を元気にする」という村田さんの哲学は、かつて彼自身が監督から受け取った熱量そのものであり、今度は村田さん自身が発信源となって、子どもたちや地域の人々の心を震わせています。 言葉だけでなく、自らの生き様そのものをメッセージとして発信する姿勢こそが、真のリーダーシップなのだと改めて気付かされました。

~ゼロイチのリアルと「巻き込む力」の源泉~

「滋賀にJリーグクラブをつくる」という壮大な夢。しかし、そのスタートラインは、練習場もなく、資金もなく、暗闇のグラウンドでボールを蹴るという、あまりに泥臭い現実でした。

ゼロからイチを生み出すことの難しさは、孤独との戦いでもあります。それでも村田さんが折れなかったのは、自分自身の夢に誰よりも深く「没入」していたからに他なりません。 「自分を信じてくれる人が一人いるだけで、人はまた前を向ける」。 そう語る村田さん自身が、まずは自分を信じ、滋賀の未来を信じ抜いた。その揺るぎない確信が、当初は無謀に見えた挑戦に、一人、また一人と仲間を巻き込んでいく原動力となったのです。

~「没頭」は伝播し、街を変える~

私が今回の対談のテーマに据えた「没入(没頭)」。 村田さんの活動は、まさに「没頭の伝播」そのものでした。一人の狂気にも似た情熱が、スポンサーを動かし、行政を動かし、そして次世代の子どもたちの瞳に火をつけていく。

組織づくりにおいても、リーダーが誰よりも楽しそうに、そして真剣に没頭している姿を見せることほど、メンバーを鼓舞するものはありません。 「挑戦する大人はかっこいい」。 その背中を見せ続ける村田さんの挑戦は、滋賀という地域を超えて、日本のスポーツ文化、そして地方創生の新しいモデルケースになっていくことでしょう。