Luvirが描く〈拡張する組織〉とは? ――「Luvirマフィア構想」に迫る!
アルムナイを入口に、「辞めてもつながる組織」のあり方を探ってきたこのシリーズ。その締めくくりとして浮かび上がってきたのは、単なる制度論ではなく、組織そのものを“拡張可能な存在”として再定義する構想だった。
Luvirが構想する「組織文化診断」ツール。
辞めたあとも仲間として関係が続く「Luvirマフィア構想」。
雇用の内と外を分けて考える時代は、すでに終わりつつある。送り出す側と辞める側、その双方に生まれた“揺れ”がいま、組織の未来像そのものへと向かっている。
「退職」は組織にとって事件である

中川:第2回ではLuvirを卒業する当事者に同席してもらい、辞める側と送り出す側、それぞれが何を感じていたのかを率直に話しました。退職がポジティブな選択であっても、それまで見えていなかった違和感や課題が表に出てくる。その現実をLuvirの中で共有できたか回だったと思います。
では今後、それらをどう受け止め、組織としてどう前に進んでいくのか。
最終回では、そのあたりを話していきたいと思います。
と言っても内輪だけの話し合いではありません。
ゲストの鈴木仁志さんはもちろん、卒業予定の小川さんもこの場にいますので(笑)、立場の違いも含め、4人で忌憚なく意見交換できればと思います。
鈴木:引き続きよろしくお願いします。
前回お話ししましたが、アルムナイを専門にしている僕自身でも、従業員に辞められるとやっぱりショックを受けるんですよね。中川さんも、小川さんに退職の話を聞いたとき、マックシェイクの味がしなかったと(笑)
極端なたとえになりますが、僕らは誰かの死に直面して初めて、「ああ、人って本当に死ぬんだ」と実感するじゃないですか。
それとよく似ていて、組織でも「辞めます」と告げられたときに初めて、その人が“いなくなる存在だった”ことに気づかされる。
第2回で語られていたのは、まさにその場面でした。
中川:自分たちの関係は変わらないと、どこかで思い込んでいたんですよね。それが、一気に揺らいだ感覚がありました。
鈴木:そして揺らいだと同時に、組織は選択を迫られます。
関係を終わらせるのか、形を変えて編み直すのか。
その分かれ目にあるのが、「どう送り出すか」ということなのですが――以前、中川さんが話してくれた“マフィア”のたとえ。あれがすごくしっくり来るんですよ。
Luvirマフィア構想という答え

中川:僕が言い出したんですが、改めて聞くと物騒ですよね(笑)
うちは「真剣な遊び場を増やす*」「プレイフルな職場を増やす*」というビジョンを掲げていますが、正直、それをLuvir一社だけで実現するのは無理がある。
だから雇用関係があるかどうかに関係なく、同じ思想や言語を共有する人たちとネットワークをつくり、外へ広がっていきたいと思っています。
もっと言えば、言語や思想を共有している限り関係は続けられる。むしろ、雇用という枠を外すことで、役割や立場に縛られない関わり方が生まれるのではないか?
それが「Luvirマフィア」構想の原点です。
鈴木:小川さんはこの話をどう受け取ったの?
小川:僕自身は辞めるというより、関係の持ち方が変わったという感覚に近いので、中川さんのお話を聞いて、正直すごく安心しました。
Luvirでは、どう働くかだけではなく、どう考えるか、どう人と関わるかという思考の癖を共有してきたと思います。所属は変わっても、その視点や言語はこれからも使い続ける。それを「マフィア」と呼ぶなら、確かにしっくりくるなと(笑)
鈴木:面白いのは、「しっくりくる」等の感覚はセンスや相性の問題ではなく、組織がどんな“空気”をつくってきたかが、そのまま表れているところなんですよね。
ただ、それを言葉で説明するのは、なかなか難しい。
■編集部注
「真剣な遊び場を増やす」とは、個人の態度やスタンスを指す言葉だ
もちろん、ふざけることではない。
仕事に本気で向き合いながら、試行錯誤そのものを楽しめる人を増やしたい、という意味である。
仕事を遊びのように自由に考える。だが、結果や責任からは逃げない。
本気で取り組むからこそ、そこに“遊び”が生まれる——そんな状態を指している。
一方で、「プレイフルな職場を増やす」は、環境や組織の設計の話だ。
個人の姿勢だけでは、真剣な遊びは長く続かない。
失敗しても即アウトにならないこと。意見や違和感を口にしても、空気が凍らないこと。役割や肩書きよりも、試した行動そのものが評価されること。
つまり、「真剣に遊べる人が、力を出し切れる場」を増やすということ。
それは個人任せではなく、組織のルールや文化によって支えられて初めて成立する。
組織を動かすのは“正解を出さない”診断!?

奥地:まさに、そうした“言語化しづらい感覚”を扱おうとしているのが、我々が考えている「組織文化診断」です。
相性がいい/空気が合う/居心地がいい
そうした言葉は便利ですが、なぜそう感じるのかまでは説明できないことが多い。でも実際には、必ず理由があります。
どんな前提で意思決定をしているのか
何を評価し、何を見過ごしてきたのか
挑戦や失敗を、どう扱ってきたのか
その積み重ねが、「組織らしさ」や「空気」をつくっているわけです。
我々の「組織文化診断」は人を分類するものではなく、組織がどんな判断軸や価値観の上に成り立っているのかを、構造として捉え直すものです。
中川:いわばMBTIの組織版のようなイメージですが、正解を出したり、良し悪しを評価したりするものではありません。
「うちの組織って、どんな前提で動いているんだっけ?」
そんな会話のきっかけをつくるためのツールです。
実際にやってみると、経営、管理職、現場が同じ診断に答えることで、見え方の違いがはっきり出るんですよ。
ちなみにタイプ名は「江戸幕府タイプ」や「老舗旅館タイプ」といった、ちょっと遊び心のあるものを考え中です。
なぜLuvirが「日本一」を目指すのか
中川:僕は、Luvirを「日本一の人事組織のプロフェッショナルファーム」にしたいと思っています。理由はシンプルで、「日本一」という看板が持つ影響力は計り知れないから。
もちろん、日本一といっても定義はいろいろあります。
売上なのか、規模なのか、それとも「人事×組織づくり」で真っ先に名前が挙がる“第一想起”なのか。どの指標を軸に据えるのかは、今後チームでさらに深めていくべき論点だと考えています。
ただ、どんな指標を選ぶにせよ、突き詰めればゴールはひとつだと思っていて。
それは、「どれだけ従業員一人ひとりの行動を変えられたか」。
うちのクライアントが特別だから、という話ではありません。
僕らが真正面から向き合っているのは、その企業で働く人が“没入できる状態”にまで至れるかどうかという点です。
鈴木:中川さんのお話につながりますが、BtoBのプロフェッショナルサービスで導入事例として世に出てくるものは、ほとんど“人事の話”ですよね。でも、本当の価値はその先にあって、「従業員一人ひとりの働き方や行動がどう変わるか」なんです。
そしてこれはアルムナイも同じで、「制度がある・ない」に回収されるテーマではありません。辞めた人とどう向き合い続けるのか――そこに組織のスタンスや覚悟が表れる。
中川:おっしゃる通りで、最終的には「現場がどう変わるか」に尽きると思っています。
その上で、どれだけの従業員に影響を与えれば日本一と言えるのか。
ざっくりですが、労働人口の10%に届けば相当な規模になる。そういうスケール感で未来を見ています。
奥地:いまの話を聞いて改めて感じるのは、矢印(いま企業が本当に向き合うべき対象)が、個人へと確実に寄っているということです。
一方で、制度やインフラはまだ“組織側の論理”で設計されている部分が多い。
このズレが、辞める・残るといったキャリアの選択を、必要以上に重たい問題にしている気がします。
問いが残る組織だけが、拡張できる
中川:そろそろまとめに入りましょうか。
奥地:これからの組織には、「この会社で働きたい」と思える場所を、特別な成功例ではなく、当たり前の選択肢として増やせるかどうかが問われていくと思います。
僕と中川の子どもは同じくらいの年齢なんですが、彼らが大人になる頃には、そんな企業が自然に選択肢として並んでいる社会であってほしい。
だからこそ、組織を雇用の内側だけで完結させないという前提で考え続ける必要があると思っています。
鈴木:おっしゃる通りで、これからは「いい会社をつくる」というより、「関係が更新され続ける会社をどう設計するか」が問われていくでしょう。
アルムナイも、やさしい言葉で関係を飾るための制度ではありません。
関係が変わっていく現実のなかで、「それでも、どうつながるのか?」を問い続けるための考え方だと思っています。
中川:本日はありがとうございました。
鈴木さんには、アルムナイのというテーマを、制度だけではなく、思想としても整理していただきました。
そして小川さんには、この対談企画を一緒につくりながら、退職という選択が「終わり」ではないことを、当事者として示してもらったと思います。
実は、小川さんの退職後に社員旅行があるのですが、その幹事をやると言っていますし(笑)
この事実だけでも象徴的で、送り出される側が場をつくる——その姿勢そのものが、今回の対談で語ってきたテーマを何より体現しているように思います。
少し長い対談になりましたが、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

ここからは、社長個人としての振り返りを、少しだけ書かせてください。
メガネ社長の編集後記:辞めることから始まった、組織の話
この3回の対談は、もともと「アルムナイ」というテーマから始まりました。
でも振り返ってみると、本当に話していたのは「人材の価値の循環の作り方」であった気がします。
人手不足の中、退職者を“過去の人”にするのか、“未来の価値を連れて帰ってくる仲間”として扱うのか、企業文化を理解し、現場を経験しているから即戦力として、さらに“未来の価値を連れて帰ってくる仲間” として扱うのか。
「アルムナイ」の本質はここにあると感じました。
人が辞めるとき、寂しさも、悔しさも、未練も残る。
それでも、その感情をなかったことにせず、「じゃあ、この関係はここからどうなるんだろう?」と考えられるかどうか。
その姿勢こそが、組織の成熟度を分けるのだと。
Luvirマフィア構想も、組織文化診断も、雇用の内側に閉じない組織をどう現実の設計に落としていくかという挑戦です。
しかし正直に言えば、まだ完成形を用意できていません。
それでも、「関係を閉じないこと」だけは決めています。
皆さんの組織に、そして一人ひとりの働き方に、
小さな問いをひとつでも残せていたら、嬉しく思います。
P.S
小川さんの退職について、自身の想いを備忘的にLinkedInに残しております。
ご興味あればぜひご覧ください。
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7395230784569200640