2026.01.19 ニュース

【レア回】退職者本人が登場! アルムナイ第一人者・ハッカズーク鈴木社長と語る 会社と人の理想の関係 vol.2

【レア回】退職者本人が登場! アルムナイ第一人者・ハッカズーク鈴木社長と語る 会社と人の理想の関係 vol.2

「辞める人」から始まる組織のアップデート Luvirを揺らした問いの正体とは?

退職は“関係の終わり”ではない。そう信じたい。しかし現実には……。

送り出す側に湧く寂しさ。辞める側に残る申し訳なさ。感情の揺れはいつだって、会社を本気で愛してきたことの証だ。そして時に、そんな互いの感情が組織の変革を加速させることもある。

第2回では、Luvirを卒業する当事者が、中川・奥地、そしてゲストの鈴木さんに投げかけた一つの問いを追っていく。退職の裏側にある「本音」とそこから生まれる“関係のアップデート”を見つめたい。

Luvir以外に好きな会社ができちゃいまして……

中川:前回のお話で、アルムナイが注目されるようになった背景には、人材不足・情報の透明化・価値観の転換という3つの大きな変化が重なったことがよく分かりました。

そして今回は、その“アルムナイになる直前”のリアルな人物――12月でLuvirを卒業する小川さんが同席しています。

正直、僕らにとってもまだ生々しいテーマではありますが、「辞める側」と「辞められる側」の、忌憚なき両方の感情を語っていきたいと思います。

なお、今回は随所にフランクな口調が出てきますが、リアルな会話として予めご了承ください。

■編集部より補足

小川さんは12月より、「自動運転の民主化」を掲げる自動運転ソフトウェア企業に転職し、人事(育成領域)を担当する。 “移動がもたらす自由を支える”という自身の原点と、Luvirで磨いたプレイグラウンドづくりの専門性を掛け合わせる新たな挑戦だ。

中川:あれは9月中旬だったかな。クライアント訪問を終えた後に「ちょっとお時間ありますか?カフェに行きませんか?」と言われまして。

鈴木:うわ~、嫌な導入ですね(笑)

中川:ええ、だから即聞きましたよ。「それってポジティブ、ネガティブどっち?」って。

小川:「ネガ寄りですかね」と答えたかと……。

奥地:中川さんはオフボーディング研修を受けておくべきでしたね(笑)

中川:しかも行こうとしていたカフェが満席で、ネガティブと聞かされた上で待つという地獄。

小川:結局、近くのマクドナルドの角席に座ったんですけど……。

中川:そこからやっとですよ。「実は……Luvir以外に好きな会社ができちゃいまして」みたいな、エモい告白をされたのは。嫌な予感はしていたけど、いざ言われると膝から崩れ落ちそうになりましたね。バニラシェイクの味がせず、店員にクレームを入れました(笑)

それから気を取り直して次に聞いたのは、「どこ?(次はどこへ行く)」だったっけ?

小川:はい。自動運転のソフトウェアを開発する会社の人事部です、と。

中川:もし次が同種のコンサルファームだったら全力で反対していました。ウチ以上のコンサルファームはないと本気で思っているので。

奥地:転職先候補にコンサルファームは?

小川:その考え自体、全くなかったですね。

中川:それで話を聞けば聞くほど、小川さんの芯にある価値観にハマっていて、僕の中で2つの声が同時に響いたんです。

「ここまで一緒にやってきたし、これからも一緒にやりたい」

(=会社の代表としての声)

「(小川さんのやりたいことは)筋が通っているじゃないか。それなら応援できる」

(=人生の先輩としての声)

奥地:企業側としては“影響”もきちんと伝えないといけないので。「いまの状況であなたが抜けると、こういうインパクトが出ますよ」と、僕も前職のコンサル時代に必ず話してきました。

鈴木:その辺りのせめぎ合いは、まさにアルムナイの現場でよく起きることなんです。

実は僕も、会社のメンバーから「辞めます」と言われると、めちゃくちゃショックを受けますよ。

中川:アルムナイのプロでもそうなりますか。

鈴木:頭ではわかっていても、どうしても先に感情がきてしまう。でも、その気持ちにフタをしないほうがいい。ショックを受けるということは、その人を本気で仲間だと思っていた証拠ですから。

中川:実際、鈴木さんが社員を送り出すときはどうされているんですか?

鈴木:先ほど中川さんがおっしゃった「会社の代表としての気持ち」と、「一人の先輩としての気持ち」は必ず伝えるようにしています。そして奥地さんがおっしゃったように、“辞めることによる影響”も。

これが一番のポイントなんですが、もし誰かが辞めても平然としていられる経営者だったら、アルムナイは機能しません。 “感情を殺さない”ことは、送り出すうえで欠かせないプロセスと言えます。

中川:なるほど……。その上で最終的に「応援しているし、これからも仲間だよ」と心から言えるかどうか。それがアルムナイとの関係性の質を大きく左右するわけですね。

鈴木:とはいえ、なかなか難しいですけどね。

中川:しかも僕の場合は、ずっと言ってきた「組織に残ることだけが正解じゃない」という言葉を、自分自身が試された感覚もあって……。

奥地:一方で、小川さんにも“言い出せない葛藤”があったのでは?

小川:はい。正直すごく悩みました。HONDA(人事担当)を出てLuvirに来たときも、未知のフィールドに飛び込むワクワクに賭けた部分が大きかったんです。人事の専門性を活かしながらコンサルや事業開発にも関わり、少数精鋭の会社が一気に成長していく局面を肌で感じられることが本当に面白くて。

中川:その感覚はすごく伝わってきてたよ。

小川:ありがとうございます。それで今回改めて気がついたのが、自分の中でずっと“モビリティ”がテーマになっていたということなんです。そもそも車やバイクよりも、“移動がくれる自由”に惹かれてきたんだと思います。

だからLuvirでも、組織の“移動”や“変化”を支える仕事に関わる中で、「これは自分の原点と地続きだな」と感じる瞬間に充実感がありました。

だからこそ、「大事なフェーズを味わいきれていないのに、自分から区切るべきなのか?」と、何度も悩み、ランニングしながら数週間ずっと考えて……。

でも、自分の性格上、気になった方向に飛び込まないと納得できないタイプなので。最終的には腹を決めました。

鈴木:小川さんは「すごく悩んだ」ことを社内の誰かに相談した?

小川:いえ、誰にも相談せず退職すると決めて、それを最初に伝えた相手が中川さんです。申し訳ない気持ちが先立って、一人で抱えてしまいました。

奥地:今回の件で改めて感じたのは、組織スタイルが思わぬところに影響を及ぼすということです。

うちは基本フルリモートなので、どうしても日常のタッチポイントが少なくなる。その結果、何気ない会話の機会が減り、相談しづらい空気が生まれてしまうわけです。

こちらとしても、ほんの少しでも顔を合わせれば「ん?今日はいつもと感じが違うぞ?」といった、微細なサインに気がつくはずなんですが……。

これはフルリモートの弊害で、今後もしっかり向き合うべき課題です。

鈴木:まさに今、多くの会社で同様のことが起きています。

たとえば“オン”の会議と“オフ”のイベントはあるんだけど、その間にあったはずの「ちょっと熱い話をする差し飲み」が消えてしまったとか。

実はこの“真ん中”こそ、心理的安全性や相談の早期発見につながる大事な時間なんですが。

中川:Luvirも例外ではないですね。仕事の議論をする場と、完全オフの飲み会はあるけれど、その真ん中の「遊び半分・仕事半分」のような余白をうまく設計できていない。

小川:飲みの話で言うと……退職話をしたあとにサミット(全社会議)があって、飲みながら皆さんと話せたのはすごく大きかったです。

その後もちょこちょこサシ飲みに誘ってもらえて、「なぜ辞めるのか」「Luvirをどう思っているのか」をちゃんと伝えられたんですね。それもあって、僕の中では“これで終わり”じゃなくて、これからの関わり方も前向きに捉えられるようになった気がします。

中川:(読者の皆様にはやっと種明しをしますが)

というか、この「アルムナイ」をテーマにした対談企画事体、小川さんの発案だし(笑)

鈴木:聞いたときはびっくりしましたけど、めちゃくちゃ良い話ですよ。これほど健全なアルムナイの姿はない!(笑)

奥地:しかも送別される側の小川さんが、僕たち全員に贈り物をするという……。普通は逆!

鈴木:そうなんですか? それってアルムナイの世界でも意外に重要なんですよ。目に見えるモノがあると、「まだつながってるな」という感覚が自然と育まれるので。

奥地:そこまで考えていたのか小川さん(笑)

でも僕はね、「去る者は日々に疎し」という言葉があるけれど、辞めたから関係が薄れると感じていない。むしろ、この先もっと深まるんじゃないかと予想しているんです。

だから、もしこの言葉を言い換えるなら……そもそも「去る者じゃない!」くらいに思っていますよ。

鈴木:素敵じゃないですか。アルムナイの本質がそこにある。

辞める=ゼロではなく、形が変わった関係性が続いていく。そこをどうデザインするかが、これからの企業の腕の見せ所です。

中川:小川さんの退職を通じて強く感じたのは、誰かが辞めるという出来事は、組織を揺らす大きな問いになるということでした。

たとえば、こんな問いが突きつけられました。

・そもそも相談しやすい関係性を築けていたのか?

・キャリアの選択を自由に語れる場があったのか?

・オンライン中心で欠けていた“真ん中の余白”をどう取り戻すのか?

・辞める人を“損失”ではなく、“アップデートの起点”として扱えられるのか?

小川さんが投げかけた「退職」というテーマは、実は僕たち自身に向けられた問いでもあったのだと思います。そして、この問いに向き合うところから、Luvir のアップデートは始まると確信しました。

【次回(最終回)予告】

小川さんのキャリア選択を通じて、“辞める”という出来事が組織にもたらす揺らぎと、その裏側にある問いを見つめた第2回。では、Luvirはその問いにどう応えていくのか。

最終回では、“Luvirマフィア構想”など、まだ語りきれていないテーマに踏み込みます。