1on1

1on1のメインセッション

1on1のメインセッションで話すべきテーマ

メインセッションは、まず本人に悩みや課題などの話したいことを聞くところから開始します。

たとえば、インターネット関連企業のヤフー株式会社では、「今日は何を話しますか?」という質問からスタートするようにしています。

ただし、回を重ねていくと「特にありません……」と返答される場合も出てくるので、定期的に話すべきテーマは上司が準備した方がよいでしょう。

よくあるテーマとしては、①業務の課題、②組織の課題、③目標達成に向けた進捗④キャリア志向や能力開発、⑤戦略や方針の伝達などが挙げられます。

①業務の課題は、部下の困っていることや懸念、反対に、任せてほしい業務を知りたいときのテーマです。

「業務で困っていることは何ですか?」「業務について、何かしてほしいことなどのリクエストはありますか?」などと尋ねてみましょう。

②組織の課題は、チームの改善点や人間関係について尋ねるときのテーマです。

「あなたから見て、チームメンバーは能力を発揮できていると思いますか?」「人間関係で困っていること、気になることはありますか?」などが質問として有効です。

目標達成に向けた進捗は、目標達成のための取り組みや必要なサポートがあるか知りたいときのテーマです。

「目標達成への進捗はどうですか?」「達成に向けて私がサポートできることはありますか?」などを尋ねてみましょう。

④キャリア志向や能力開発は、部下の強み弱み・やりがい・キャリアの方向性などについて把握したいときのテーマです。

「自分の強みや弱みをどう認識していますか?」「将来的に関わりたい仕事やキャリアの方向性は?」などと質問してみましょう。

⑤戦略や方針の伝達がある場合は、上司から今検討していることや決定事項を伝えましょう。

ただし、毎回これら全てを話すと60分では収まりませんし、同じことを短期間で何度も聞く必要もないので、複数のテーマを織り交ぜながら、相手の特性に合わせて話題を選択します。

情報への感度・意識についてはさまざまな人がいるため、相手の特性に合わせて伝え方を工夫することで、モチベーションの向上が図れます。

たとえば「会社のことは何でも知りたい」というタイプの人には、「まだ決まっていない内容ですが」「◯◯さんには意見を聞きたい」というように、情報をできるだけ先出しして伝えることで、本人の納得感や安心感を高めることができます。

反対に「会社のことにはあまり興味がない」タイプの人には、「今市場はこういう状況で」「他社と比較すると当社はここが強くて」など、本人が普段見ていないようなニュースの情報などを加えることで、相手の興味を喚起できます。

このように、5つのテーマとそれぞれの質問例を参考に、個人や組織の状況に適した話題を選ぶことで、1on1のメインセッションを効果的に行いましょう

1on1のメインセッションでの対話に必要なコーチングスキル

メインセッションでは部下本人が話したいことや適切なテーマについて対話をしますが、対話のなかで上司は必要に応じて、ティーチング・コーチング・フィードバックのスキルを活用する必要があります。

ティーチングとは、直接的に助言してスキルやノウハウの向上を支援することを指します。

たとえば、部下が業務を行う上で必要となる知識や技術などを教えることは、ティーチングの一つと言えます。

フィードバックとは、良い点を伝えることで相手との信頼関係を強化する、改善点を伝えることで相手の自発的な改善行動を促すといった、相手の成長のために良い点・改善点を率直に伝えることを指します。

フィードバックについては、別の講座で詳しく解説しているのでぜひそちらも参考にしてください。

このようにティーチングとフィードバックは決められた1on1の場だけで行うというよりは、日々適切なタイミングで積極的に実施するものです。

1on1で特に意識すべきなのは、コーチングです。

コーチングは、相手が自発的に行動し、実行力を発揮できるようにするところまで行う点が特徴です。

ティーチングやフィードバックが相手に知識を教える、ポイントを伝えるといった、「与える」ことによって変化を促すものであるのに対し、コーチングは相手の内にある能力や可能性を「引き出す」ものです。

それでは具体的にコーチングでは何を行うのでしょうか。

コーチングでは、傾聴・承認・質問を行います。

傾聴相手に集中して共感しながら、注意深く聴くこと、承認は相手に感謝の気持ちを伝える、変化を認めることなどを指します。

特に技術を求められるのは質問です。

コーチングで有名な質問のフレームワークにGROWモデルというものがあります。

GROWはGoal」「Reality」「Options」「Willの頭文字からなっており、あるべき姿を相手に認識させることで、ゴールに対する現状を確認してもらい、あるべき姿に向けた対策の選択肢およびアクションを検討させます。

Goalとしては、「○○についてどうしたいと思っていますか?」「あなたが満足できると思う状態とは、どんな状態ですか?」「こんな自分になれたら嬉しい、と思うイメージはありますか?」など、部下の満足する状態などを聞きます。

Realityとしては、「今はどのような状況ですか?」「ゴールに向けての一番の課題は何ですか?」

「どこが特に難しいですか?」など、今の状況や課題について聞きます。

Optionsとしては、「どのようなアクションが必要ですか?ほかにもできることがあるとすれば、それは何ですか?」「これまでに一番うまく行った方法は何ですか?」「これはあなた単独でも達成できることですか?そうでない場合は、誰に助けてもらいますか?」など、目標達成のためのほかの方法や他者からのサポートについて聞きます。

Willとしては、「まず何から始めますか?」「○○について、いつまでに行いますか?」「進捗のチェックは、いつ・どうやって行いますか?」など、いつ・どうやって行動するかについて尋ねます。

また、対話の自然な流れのなかで部下がより鮮明に振り返り、考えを深めるためには、「たとえば?もう少し詳しく教えてもらえますか?」といった具体化する質問、「ほかに何かありますか?それからどうなりそうですか?」といった認知を広げる質問、「一番大事なことは何でしたか?話してみてどうですか?」といった話をまとめる質問を行うことも有効です。

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