フィードバック

改善を促すフィードバックの方法

改善を促すフィードバックには、相手を認めるフィードバックよりも大きな効果があると言われています。

リーダーシップ開発で有名なアメリカのコンサルティング会社によると、アンケート回答者の72%が『上司からの改善のフィードバックをもらえれば自分の成果を高められる』と考えていました。

改善を促すフィードバックの効果はこのように大半の人に理解されているようですが、 実施方法を間違えると、効果が出ないのみならず、信頼関係が崩れる・ハラスメントとして通報されるリスクもありますので、正しいやり方を身につける必要があります。

具体的な実施方法

まず、実施タイミングとしてはなるべく早く、場所は安心できる環境を準備します。

具体的には、個室や1対1のビデオ会議など、人目のない環境で実施するとよいでしょう。

人目のあるところで実施すると、批判された・恥をかかされたなどと捉えられてしまう恐れがあります。

「人前で叱って人格を傷つけた」として、パワーハラスメントに認定される可能性もありますので注意が必要です。

時間としては30分、相手の話をじっくり聴くことを想定しても1時間程度で実施することが望ましいです。

環境や時間を調整できたら、実際に改善を促すフィードバックを行います。

改善点を指摘するときの基本的な進め方には「サンドウィッチ型」というものがあります。

食べ物のサンドウィッチの形のように改善点を良い点で挟んで伝える方法です。

具体的には良い点を伝える→改善点を指摘する→改めて良い点や改善に向けた期待を伝えるの流れで進めます。

たとえば、まず良い点として「いつも献身的に皆をサポートしてくれてありがとう」と伝えます。

次に改善点である「一方で、サポートに追われていてあなた自身のタスクが進んでおらず困っている。自分のタスクの期限は守ってほしい。」というメッセージを伝えます。

最後に再度良い点として「サポートには皆感謝しているし、そこは良い点でもある。もっと自身のタスクにかける時間を増やして、サポートとのバランスを取ることで、組織全体にさらに貢献できる。あなたならできるので期待している」と声を掛けます。

このように、初めに良い点を伝えることで、相手との信頼関係を築き、本人が指摘を受け入れやすい状況を作ることができます。

次に、改善点を指摘した上で、「あなたならできる」というポジティブなメッセージを発信します。

「期待しているからこそ注意している」「信じているからこそ伝えている」というように、

最後はポジティブな話で終わることが重要です。

ただし、改善点を伝えるたびに無理にサンドウィッチ型を作ると、不自然な話し方になるため、お互いフィードバックに慣れてきたら、改善点だけを率直に伝えたほうが効果的です。

一例として、導入の進んだ企業では、上司がサンドウィッチ型にこだわりすぎてしまい、「上司が面談で良い点を説明しはじめると次に改善点が来ると予想できる。良い点に信憑性がなくなってきた・・・。」とのコメントもありました。

実施するときのポイント

改善を促すフィードバックを実施するポイントは、「サンドウィッチ」の具材とも言うべき改善点を指摘する際に、

①事実を確認し

②自分がどう感じた/考えているかを伝え

③具体的にどう改善してほしいかを伝える

という3ステップで行うことです。

これが、改善を促すフィードバックを行う上で、最もスキルが求められる部分です。

まず、『①事実を確認する」では、SBI(Situation,Behavior,Impact)情報を集めます。

「どんな状況で(Situation)」、「どんな振る舞いをしたことで(Behavior)」、「どんな影響があったか(Impact)」を収集します。

複数の情報を引き出しにもち、それらをセットで伝えると効果的です。

例えば、提出物の期限を守れない部下がいるとします。

その場合、「いつも期限を守らないですよね。社会人として甘いのでは。」などと、抽象的に言うのではなく、「今回期限を3日過ぎて提出いただきました。前回も2日過ぎての提出でした。」というように具体的に状況を伝え、事実に相違がないか確認します。

その上で「それがどのような悪い影響を与えているか」「なぜそのような行動を直さなければならないか」といった理由を論理的・客観的に淡々と伝えていきます。

出所が曖昧なことを伝えると相手は反発します。

また、伝える側が知らなかった背景などもあるかもしれませんので、客観的な事実を伝えて状況の確認をすることが求められます。

『②自身がどう感じたかを伝える』では、「SBI」で述べた客観的事実に対して、「私がどう思ったか」といった、主観的な意見を相手に伝えます。

その際、感情的・攻撃的な言葉遣いは控え、誠実さと率直さを心掛けながら想いを伝えます。

先ほどの期限を守れない部下の例であれば、「期限を守れないことについて、私は残念に思っている。」「日々の締切を守ることが、社内で信頼されることの第一歩だと考えている。」

というように伝えます。

最後に、『③具体的にどのように改善してほしいか』を伝えます。

期限を守れない例であれば「期限を守ろう」だけではなく、「なぜ期限を守れないのでしょうか」など本人が話せる機会を作ります。

要望の言い切りではなく、改善のアクションを自分で考えてコミットさせることで、本人の自発的な改善行動を促すことができます。

このように正しい手順でフィードバックを進めることによって、相手の成長につながるフィードバックができるため、意識して日々取り入れるようにしましょう。

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