PMI

人事PMIの概要と目的

PMIとはなにか

PMIとは、Post Merger Integrationの略称です


確たる定義は存在しませんが基本的には『企業合併・買収により得られる成果やシナジーを最大化しリスクやディスシナジーを最小化するためのM&A後の統合プロセス』を指します

PMIに失敗したためにディール自体が失敗に終わったり、企業価値が低下してしまうケースは多くあります

そのような失敗を防ぐために、PMIが関わるべき領域は主に6つあります

①戦略
ビジネスモデルの再構築、マーケティング戦略の再構築、アライアンス(取引)先の精査などの『戦略』

②機能・組織
経営執行体制の変更、組織体制変更、権限・責任の再定義などの『機能・組織』

③制度・ルール
経営管理、管理会計、人事制度の統合などの『制度・ルール』

④オペレーション
各組織における業務手順、スケジュールの統合・設計などの『オペレーション』

⑤システム
基幹システム、業務システム、業務支援系システムの統合などの『システム』

⑥人・文化
人材移管・再配置、チェンジマネジメントなどの『人・文化』です

人事PMIとはなにか

これらのPMIの中でも、特に人事が関与するものを人事PMIと呼びます

人事PMI『ディスシナジーを生じさせないこと』『移管した組織が健全に機能する状態を実現すること』この二つの目的を達成する上で、非常に重要な役割を果たしています

人事PMIの目的①

組織が統合してすぐに、会社に対する反発や離反行動といった急性の拒絶反応を起こしたり中長期的に組織にネガティブな効果をもたらす、慢性の拒絶反応を起こしたりする人材が現れることがあります

こうしたマイナスの反応を起こしてしまう人材は『新組織に適応できるか(なじめるか)否か』『業界や部署を問わず求められるスキル(ポータブルスキル)が高いか否か』によって人材を4つの領域に分けることで見つけることができます

このなかで、マイナスの反応を起こしてしまう人材は、一体どの領域の人材でしょうか?

実は、③と④に当たる人材は、人事PMIができていないと組織に対して大きな損害を与えてしまう可能性があるのです

③の領域に該当する人材は、徐々に居場所をなくして慢性の拒絶反応を起こし勤務態度が悪化する、上
司や組織の批判を繰り返すなど周囲の人材の生産性やモチベーションを低下させてしまうケースがよく見られます

④の領域に該当する人材は、新たな組織になじめずに急性の拒絶反応を起こし多くの場合、ほかの組織でも活かせるスキルを持って他社へと移ってしまうことになります。

こうした拒絶反応をコントロールして『マイナスをゼロにする』活動が人事PMIの側面の1つです

①・②の人材は新組織に留まり、活躍することができます

人事PMIの目的②

これまで説明してきた『マイナスをゼロにする』活動に加えプラスに向けた働きかけも重要な側面です

これは、新たな企業戦略や組織体制のなかでこれまでの枠組みから脱却し、より望ましい行動をとってもらえるように制度・ルールの整備や文化醸成を行っていく活動のことを指します

こうした人事PMIによって、20%-30%といわれるM&Aの成功確率※1を上げることができます

M&Aの失敗の最大要因は 『合併する企業同士の企業文化の不適合』とされている※2ため、人事PMIはディールの成功に貢献できる余地が大きいのです

※1 出典:デロイト「M&A経験企業にみるM&A実態調査」(2013)
※2 出典:PwC 「クロスボーダーM&Aを成功に導く、企業分化統合に向けた提言」(2018)

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