サクセッションマネジメント

サクセッションマネジメントの効果と必要性

サクセッションマネジメントとは何か

サクセッションマネジメントとは、経営幹部や事業推進のためのキーポジションについた社員の後継者候補を特定し、配置・育成のプロセスを設計・運用することを指します。

具体的には各ポジションに後継者候補が何人いるか、各々はどのような状態であるかを把握し、育成計画を立てます。

そして、育成進捗を定期的にレビューすることで、育成計画のPDCAを回して後継者候補を成長させていきます。

なお、サクセッションマネジメントには育成のみならず、外部からの採用も視野に入れた対応が求められますが、この記事では育成の話を中心に説明します

サクセッションマネジメントがもたらす効果

サクセッションマネジメントを計画的に実行した場合、これら4つの効果が得られると言われています。

①後継者不在時の経営リスクの回避
②交代後の持続的な組織の成長
③後継者候補のリテンション
④内部からの昇進に伴う組織の活性化

①後継者不在時の経営リスクの回避

現任者の年齢や健康、家庭の事情、不祥事対応なども含めて、あらゆる不足の事態に対応できるようサクセッションマネジメントを行っておくことで、急な現任者の離職による経営リスクを回避することができます。

②交代後の持続的な組織の成長

将来の事業展開を見据えた後継者育成を行うことで、交代後の高いパフォーマンス発揮が見込まれます。
例えば、将来的に海外事業の売上を伸ばしたい場合は、後継者候補を海外赴任させておく、今後、ITの活用を促進したい場合は、DX部門で経験させたり、IT企業へ出向させたりすることが考えられます。

③後継者候補のリテンション

あらかじめ後継者候補を特定して、期待を伝えて成長をサポートすることで、候補者は将来の見通しが立ち、安易な離職を防ぐことができます。

④内部からの昇進に伴う組織の活性化

内部で後継者候補を抜擢し、新たなポジションにチャレンジさせることで、候補者はさらに成長することができます。

また候補者が抜けた後の組織では、他のメンバーがその役割を担うことで、そのメンバーも成長できるとともに、代謝による組織自体の活性化も見込まれます。

この4つが、計画的にサクセッションマネジメントを行うことで見込まれる効果となります。

後継者の育成は経営者やリーダーの仕事・責任ではありますが、その責任者たちもいつ交代するかわかりません。

そのため人事部門が後継者育成のプロセスを仕組み化し、中長期に渡って後継者育成を継続できるようにすることが重要です。

国内におけるサクセッションマネジメントの現状

皆さんは日本におけるサクセッションマネジメントへの意識やその実施状況についてどの程度ご存じでしょうか。

経営者・事業責任者・人事責任者などのリーダーに対して、直面している人事関連の課題についてアンケートした調査によると、課題の1位は、『自分の後任を担える人材・次世代リーダーが育っていない』でした。
出所:リクルートマネジメントソリューションズ「成長期の企業の経営者・事業責任者は何に悩むのか?」(2019/9/18)

この調査から、リーダーにとって「後任を育てること」への課題意識が高いことがうかがえます。

しかし、経済産業省が実施した調査によると、後継者候補の育成計画策定・実施を行っていないと回答した企業は47%であり、サクセッションマネジメントへの取組みは本格化されていないように思えます。
出所:「日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査報告書」(2019)

また昨今は、上場企業においても高齢な創業社長が後任を指名して一線を退いた後、業績が悪くなった途端に「後継者の任命は失敗だった」と言って自身が社長に返り咲くというケースが散見されます。

出所:産経新聞「相次ぐ創業者らの社長復帰、成長へカリスマ頼るも、後継者育成はさらに難しく」(2016/10/28)

後継者育成への課題意識は大きく、重要性も高まっているものの、サクセッションマネジメントに取り組んでいる企業は多くなく、上場しているような大きな企業でも上手くいかないことがあるようす。

こういった背景も踏まえて、人事部門はサクセッションマネジメントの基本を理解し、中長期にわたり必要な人材を育成する仕組みを構築する必要があります。

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